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患者との関係構築にもITをフル活用

 入院中や退院後の患者との関係構築にも、モバイル端末やアプリをフル活用している。これらのツールを活用して「疾患や治療に対する患者の理解を深めることによって、治療に向き合う意欲を高めたり、行動変容を促したりできる」(Milani氏)のだという。

 入院中には、患者がベッドサイドでiPadを使ったり、医師や看護師の説明を受けながら検査結果などを閲覧したりできるようにした。これにより、自らの疾患や治療に関する知識を深めるとともに、どのような経歴を持つ医療スタッフが治療を担当しているのか、検査値が日々どのように推移しているのかといった情報に、患者が気軽に触れることができる。病室の空調や照明の設定をiPadで調節するような使い方もできるため、患者が看護師を呼ぶ頻度も減らせた。

「国際モダンホスピタルショウ2018」(2018年7月)では「iPhoneやiPad、Apple Watchを活用したヘルスケア変革の実現」と題して講演した
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 退院後の患者に対しては、継続的なサポートやモニタリングにデジタルを活用している。米国では日本と同様、高血圧や糖尿病、心疾患など慢性疾患の患者が増えており、「医療システムを慢性期ベースのものに変えていく必要がある」とMilani氏は指摘する。Ochsnerはその一環として、家庭でのケアを充実させてきた。

 特に重視しているのが、退院後の独居高齢者のサポートだ。「心疾患や脳卒中の患者では、心身へのサポートが乏しいほど死亡率が高まる」(Milani氏)ことが知られているため、独居高齢者に対しては退院後のケアがとりわけ重要になる。「退院後は患者にとって危険な時期だ。一般に、心不全などの治療を受けた患者の約20%が退院後3週間以内に再発を起こしたり再入院したりする」(同氏)。

 そこでOchsnerでは、各種のモバイルアプリを使って、日々の行動変容を促したり、服薬のアドヒアランスを高めたりする取り組みに力を入れている。「服薬を始めた患者の約半数が、1年以内に薬をきちんと飲まなくなる。さまざまなケアの中でも、服薬のアドヒアランスを保つことは特に有効だ」(Milani氏)。

 こうした健康管理や服薬管理のためのアプリを患者に紹介したり、使い方を説明したりするコンシェルジュ的な機能も用意した。院内に設けた「O Bar」と呼ぶ一角がそれだ。O Barには患者の相談相手となるスタッフがおり、患者の状態などに応じて適切なアプリを紹介する。これにより、デジタルツールに慣れていない高齢者が、安心してアプリを使えるようにしている。