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術前シミュレーションで虚血時間短縮

 国立循環器病研究センターでは、今回のシステムで作った心臓レプリカを年間1万2000人が発症する小児期の複雑先天性心疾患の診断や治療へ利用したい考えだ。「子供の心臓は小さくて形が複雑で、病気によって形もまちまちなので手術の習得が難しい」と白石氏は訴える。

 そこで、心臓レプリカを術前シミュレーションと若手医師の教育に使用する。正確なレプリカを使用した術前シミュレーションで、患者の複雑な心臓の構造を術前に頭の中に入れることができ、「手術時間の短縮が期待できる」(白石氏)。心臓手術を行う際は、心臓の動きを止め、虚血状態にする。新生児期や乳幼児期においては、安全に心臓を止めていられる時間は1時間程度だが、心臓の虚血時間は1分1秒でも短いほうが良いとし、「心臓レプリカの利用は確実に虚血時間短縮につながるだろう」と市川氏は展望した。

手術シミュレーションの様子
手術シミュレーションの様子
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光が当たっている範囲が手術時の術者の視野
光が当たっている範囲が手術時の術者の視野
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臓器の奥の構造も確認できる
臓器の奥の構造も確認できる
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 若手医師の教育ツールとしては、臓器の構造を把握する狙いがある。小児の心臓手術は対象が小さいこともあり、術者以外は患部を見ることができない。心臓レプリカによって、「術者にしか見えない視野や、本来切ってはいけない部分を切除して心臓の奥を見せることができる」(市川氏)。

心臓レプリカを使ったデモンストレーションをする市川肇氏
心臓レプリカを使ったデモンストレーションをする市川肇氏
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 発表会では、作成した心臓レプリカを使用して市川氏が術前シミュレーションや若手教育のデモンストレーションを行った。実際に心臓の動きを止めて手術を行う際は、心臓は柔らかくなる。これまでの臓器モデルは硬いものが多かったが、「今回のモデルは柔らかい質感が再現されているため、本番さながらのシミュレーションを行うことができる」(市川氏)。