来院患者の負担軽減を狙う
(1)の病院アプリは、東京慈恵会医科大学病院がアルムと共同で開発を進めている「MyHOSPITAL」だ。“おもてなし”というコンセプトを掲げ、来院患者の負担軽減を狙うアプリで、同病院では2017年2月末に患者向けに提供を開始する予定である。具体的には、診察券の電子化、オンライン決済、処方箋の電子化、お知らせ通知などの機能を搭載する。 診察券の電子化は、患者が普段カードを持ち歩かなくて済むようにし、急な体調不良に対応できるようにする狙いだ。発表会に登壇したアルム 代表取締役社長でCEOの坂野哲平氏は、現行の診察券について、「普段から通院する習慣のない人は携帯していない場合がある」と開発の理由を指摘した。オンライン決済については、「SMBC GMO PAYMENT」の決済システムを採用したサービスを実現する。MyHOSPITALとクレジットカード、ブランドデビットカードを連携させることで、現金を持ち歩かずにオンライン上で会計ができるようになる。「会計時の待ち時間が長いことも患者にとって負担で、医療機関によく寄せられるクレームの1つ」(坂野氏)という。
このサービスでは、診察後に患者がオンラインで会計する旨を病院に伝え、病院側で会計処理をすれば自動的に決済される。セキュリティーを考慮し、「カード情報がアプリ上に残らない仕様にする」(SMBC GMO PAYMENT 代表取締役社長兼COOの村上知行氏)という。口座振替やコンビニ支払い、携帯料金との合算請求などニーズに合わせて他の決済方法も併用する考えだ。処方箋の電子化は、例えば、家の近くの薬局に電子化した処方箋をあらかじめ送り、移動時間を自由に使えるようにするもの。「処方箋を受け取った後、薬局でも待ち時間が生じる。この時間を有効利用してもらう狙い」と坂野氏は話す。
お知らせ通知は、病院内で診察や会計の待ち時間を有効に使えるよう、呼び出しをプッシュ通知する機能。所定の待合室で待つ必要がなく、院内で自由に時間をつぶすことができる。
この他、MyHOSPITALでは、アルムが既に提供しているアプリ「MySOS」(東京慈恵会医科大学付属病院と共同開発)との連携も可能。MySOSは、健診結果や診療結果を取り込む機能を搭載したアプリで、血液検査の結果やMRI、X線CTの診断画像を取り込み、スマートフォンの画面を見せることで、医師にこれまでの検査結果を伝えることができる。MySOSは、心肺蘇生の方法や、AED・急性期病院の位置情報も提供する。近くの人が突然心肺停止状態に陥った場合、近くにいる医療関係者を呼ぶことができる機能も搭載している。マラソン大会の救護などですでに使われているという。