消化器外科は「手術件数が順調に増加」
腹腔鏡手術の普及が進んでいる消化器外科領域では、da Vinciを使った直腸がん手術が2018年だけで296件行われるなど「手術件数が順調に増加した」と東京医科歯科大学 消化器外科学分野の絹笠祐介氏は振り返る。2018年8月時点でda Vinci手術を実施した医療機関は70にのぼり、食道がんのda Vinci手術件数は例年に比べて6倍だったという。
ただし、診療報酬点数が低いことや施設基準および術者基準が厳しいといった課題も明らかになってきた。厳しい施設基準は安全上必要だが、該当施設でも1~2人しか術者がいないとなれば人材育成につながらないことを絹笠氏は危惧している。日本内視鏡外科学会では、推奨するプロクター(手術指導医)のリストを公開しているが、「まだ明確な規定や制度がないのが現状」(同氏)という。術者の勉強会を開催するなど、教育に力を入れていきたい考えだ。
泌尿器は手術指導に力を注ぐ
以前から前立腺がんと腎臓がんのda Vinci手術が保険適用されていた泌尿器外科でも「手術の質を向上するための教育に力を入れている」と名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科学の後藤百万氏は話す。
実は、名古屋大学では、2010年にロボット支援下の腹腔鏡手術を受けた胃がん患者が死亡する事故が発生した。この原因を調査したところ、問題の一つに指導医不足が挙げられた。
そこで、外科医の技術を担保するためにプロクター制度を設けた。泌尿器外科領域では2017年度までに348人のプロクターを認定している。2018年9月からは術式別のプロクター認定を開始し、既に腎部分切除術に114人、膀胱全摘除術に60人が認定されているという。