医師同士がオンラインで助け合い
まず初めに登壇したのは、整形外科医であるアンタ― 代表取締役の中山俊氏である。同社は医師同士のオンライン相談サービス「AntaaQA」を手掛けている。
AntaaQAを手掛けたきっかけは、中山氏が地方病院で一人当直をしていたときのことだった。ある夜、20歳代男性が交通事故で運ばれてきた。出血が多かったため、大量の輸血をし、右足を切断することで一命を取り留めた。「助けることができた…」とほっと一息ついたと同時に、突然恐怖にかられたという。「もしも他の疾患を患っていたら…と思うと怖くなった」と同氏は振り返る。
この経験を基に、処置や治療に困ったときに他の専門医に相談できるサービスAntaaQAを構想したのだ。医師同士が互いに質問を投げ合い、受け答えができるサービスである。
例えば、腹痛を訴える患者を診察していた医師が処置に悩み、検査画像と共に相談内容を投稿したことがあった。すると、全国の専門医から「手術をした方が良い」や「血圧が落ち着いているから手術しなくて良い」などのアドバイスがもらえるのだ。
この例では、投稿した12分後にはコメントを参考にして処置を決定し、36分後には専門医による処置を受けるためにコメントをした医師が勤務する病院への転送が決まったという。通常、院内で他の専門医に相談をしようとすると、相手の医師の都合を聞かなくてはならないため「1時間程かかる場合もあるところ、大幅な時間短縮が図れる」と中山氏は話す。
AntaaQAには現在までに内科や外科など2000人の医師が登録している。専門性が細分化される中で、「医療体制を整える一助としたい」と同氏は意気込む。
認知行動療法を基に仕事中の眠気を解決
次に登壇したのは、睡眠改善ソリューションを手掛けるニューロスペース 代表取締役CEOの小林孝徳氏。同氏は睡眠障害に苦しんだ経験から「睡眠も食事のように楽しめるようにしたい」という思いで企業向けの睡眠改善ソリューションを提供してきた。
「イライラして眠れない」という育児をしながら働く女性や、「眠りが浅くて疲れがとれない」という商社勤務の従業員、「仕事柄まとまった睡眠時間がとれない」というバスやタクシーのドライバーなど、個別の悩みに対応してきた。
実はこれまでのデータから、「70%以上の人が睡眠に満足しておらず、80%以上の人が仕事中に眠気を感じていることが明らかになった」と小林氏は話す。こうした睡眠トラブルは、帰宅時間が遅いことや通勤時間が長いことなど外的要因による影響も大きく受けている。
個人だけで解決するには限度があると考えた同社は、個人と組織の両方に働きかける「ハイブリッド睡眠ソリューション」を手掛けることにした。具体的には、マットレスの下に敷いて睡眠を計測できるデバイスと、睡眠データを基に改善のためのアドバイスをしたり眠気を予測したりするスマートフォンアプリを活用する。
認知行動療法を基にした睡眠改善プログラムとして法人向けに提供する予定で、30人に3カ月間のプログラムを100万円で提供することを想定しているという。