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ケアマネジャーをIoTやAIで助ける

 続いて、ウェルモ 代表取締役CEOの鹿野佑介氏が登壇し、ケアマネジャーなど介護専門職を助けるソリューションを紹介した。

ウェルモ 代表取締役CEOの鹿野佑介氏(写真:日経 xTECH)
ウェルモ 代表取締役CEOの鹿野佑介氏(写真:日経 xTECH)
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 現在、介護事業所は国内に21万5000件存在している。これは「コンビニエンスストアの4倍」(鹿野氏)にのぼり、その多くは中小企業である。

 この膨大な事業所の中から、どこでケアを受けるかを選択するのは、ケアマネジャーの差配に委ねられることが多い。しかし、同社の調査によるとケアマネジャーの半数は「自分の能力や資質に不安を抱えている」ことが明らかになったと鹿野氏は言う。介護事業所はチラシやFAXを通じて得た情報を基に、被介護者に事業所を勧めている。これでは個人の知識量や情報量が属人化してしまい、限定された選択肢の中でケアが行われている可能性があるのだ。

 そこで開発したのがケアマネジャーなどの専門職に向けた介護情報プラットフォーム「MILMO」である。地域包括ケアに必要な情報を蓄積・分析し、利用者のニーズに応じた介護サービスの提案をすることができる。現在までに福岡と東京、横浜、札幌の1万4500事業所を網羅しているという。

 さらに同社ではAIを活用してケアプランを作成できる「CPA(Care Plan Assistant)」も手掛けている。ケアマネジャーが要介護者の状態を入力するとAIがケアプラン案を提示する仕組みだ。2018年9月から福岡市で実証実験を行っており、「自治体との連携も積極的に図っていきたい」(鹿野氏)としている。

遠隔心臓リハで心不全の再入院を防ぐ

 次に登壇したのは、医師でありリモハブ 代表取締役社長の谷口達典氏。谷口氏は2015年ジャパン・バイオデザインプログラムに第1期フェローとして参加し、プログラム修了後に大阪大学発ベンチャーとしてリモハブを設立した。

リモハブ 代表取締役社長の谷口達典氏(写真:日経 xTECH)
リモハブ 代表取締役社長の谷口達典氏(写真:日経 xTECH)
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 同氏が会社を設立してまで実現したかったアイデアは、一人の患者を診たことがきっかけだった。80歳代の女性で心不全を抱えていた患者だ。孫の結婚式に出席することを楽しみに退院した彼女は、1週間後に心不全を再発して入院し、そのまま病院で亡くなった。

 心不全は高齢者に多く、再入院率が高いことで知られる。日本では心不全を発症した5人に2人が再入院している計算だ。一度入院すると1カ月は病院にいなくてはならないため、患者にとっては金銭的な負担も大きい。

 そこで同氏が着目したのが、心臓リハビリテーションである。週に3日以上行うと再入院率を39%低下できるとされている。しかし、週に3日通うことが難しい場合が多く、国内実施率は10%に満たないのが現状だ。

 そこで開発を進めているのが、「遠隔管理型心臓リハビリシステム」である。クラウドを経由して患者の自宅と医療機関をつなぎ、自宅にいながら心臓リハビリテーションを受けられるシステムを目指している。患者と医療従事者はビデオ通話で話すことができるようにし、リハビリテーションの負荷は医療従事者が遠隔で設定する仕組みだ。

 2018年11月には医療機器製造販売業の許可を取得し、2021年に製品化することを目指している。いずれは心不全以外の心疾患に対応するシステム開発にも取り組んでいきたい考えだ。