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医師不足のICUを遠隔で支援

 続いて登壇したのは、集中治療専門医でありT-ICU 代表取締役社長の中西智之氏である。同社が手掛けるのは、集中治療を専門としない医師がビデオ通話を通じて集中治療専門医にアドバイスを受けられる病院向けサービスだ。

T-ICU 代表取締役社長の中西智之氏(写真:日経 xTECH)
T-ICU 代表取締役社長の中西智之氏(写真:日経 xTECH)
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 例えば、横断歩道を歩いていて車にはねられ、救急車で病院に搬送されたとする。重症なので救急外来で検査や治療を一度に受け、その後入院するのがICU(集中治療室)と呼ばれる場所だ。

 ただし、国内のICUに入院しても70%の確率で専門医による治療が受けられない。集中治療専門医は国内にわずか1600人しかおらず、医師不足や偏在が問題になっているのだ。そのため、国内には専門医がいる300のICUと専門医がいない800のICUが存在している。

 同社が手掛ける遠隔集中治療支援サービスは、専門医がいない病院でも適切な治療を行えるようにすることを目的とする。米国では既に20年前から遠隔集中治療が導入されていて、死亡率が26%下がるというデータも明らかになっているという。

 現在は月額90万円で提供しているが、集中治療専門医を雇うのに比べると「コストは8分の1に抑えられる」と中西氏は話す。今後は遠隔医療サービスを救急や在宅、災害現場へ応用することも検討していきたいとしている。国外展開も視野に入れており、カンボジアやバングラデシュ、ネパールでの交渉を進めている。

脳波測定で認知症を予防できるトレーニングを

 次にNeU 代表取締役CEOの長谷川清氏が、脳機能を維持する未病ソリューションを紹介した。同社が目指すのは、「認知症にならない生活の実現」(長谷川氏)である。2025年には5人に1人が認知症になり、総額20兆円のコストがかかるといわれている。

NeU 代表取締役CEOの長谷川清氏(写真:日経 xTECH)
NeU 代表取締役CEOの長谷川清氏(写真:日経 xTECH)
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 認知症にならないための策として、頭の中の前頭前野に負荷を与えるトレーニングを行うと、「認知機能が向上することが分かっている」と長谷川氏は言う。前頭前野とはパソコンでいうとCPUやキャッシュメモリに当たる部分で、前頭前野の働きは加齢とともに衰えていくことが分かっている。しかし、脳にかかる負荷を測定するためには大型で高価な脳計測機を使用しなければならず、日常的に使用するには不向きだった。

 そこで同社が開発したのが、超小型脳活動計測装置「XB-01」である。微弱な近赤外光を使って脳の血流量変化を計測することで脳活動を見える化でき、重さはわずか30gと小型を実現した。

 2018年12月には、脳活動を計りながら脳を鍛えるサービス「Active Brain CLUB」の提供を開始。専用のスマートフォンアプリに脳活動データが送られ、スマートフォンの画面上で脳のトレーニングプログラムを行うというものだ。今後は、イベントを開催するなどして多くの人に届けたいとしている。