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健康経営銘柄やデータ利活用で動機付け

 また、経産省は、企業による従業員の健康づくりも後押しする。東京証券取引所と共同で選定する「健康経営銘柄」もその一環だ。「予防のために人は動かないし、お金をかけない。元気なうちから健康に投資する文化を築くには、企業がかじを切ることも大切。企業理念として健康経営を位置付けて従業員の健康に投資をし、それによって従業員の活力が増し、企業の業績も上がり、社会にも好影響を及ぼすという好循環を生み出せたら」(富原氏)。

健康経営銘柄2016の発表会の様子
健康経営銘柄2016の発表会の様子
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 健康経営銘柄は上場企業が対象だが、中小企業向けの支援策も用意している。中小企業が実施した健康経営の事例集「健康経営ハンドブック」を中小企業に配布したり、東京商工会議所から「健康経営アドバイザー」を派遣したりすることを検討している。健康経営アドバイザーは、東京商工会議所が研修・認定を行う。中小企業診断士など経営に精通した人には健康に関する知識を、社労士など健康にくわしい人には経営の知識を授けて育成する。

 医療・健康データを利活用して、個人に健康づくりの意識付けをする仕組みも検討中だ。レセプトのデータや健康診断のデータ、医療機関が持つ診療データ、個人がウエアラブル機器などで蓄積しているデータなどを組み合わせて利活用し、生活習慣病予防につなげる考え。ユースケースとして、生活習慣病モデルと健康増進モデルを想定している。

 生活習慣病モデルは、患者本人の同意の上で、レセプトデータと健診データに日々の運動などのデータを組み合わせ、患者が受診した際に医師がデータを活用できるようにするもの。例えば、これまでは1年に1回の健康診断でしか健康情報を取得できず、モチベーションの低下などにより、生活習慣の改善を継続できなかった患者が、症状や行動を自分でモニタリングすることや、症状や生活態度が悪化した場合に警告を受けることで、生活改善を続けやすくなるといった効果を狙う。

 健康増進モデルは、事業主や保険者が従業員の日々の活動量や食事などのデータを利活用して、個別化した指導をすることで、個人の健康づくりのインセンティブを強化するというものだ。両モデルとも、2016年夏頃から実証に入る計画だ。