さらなる高齢化が進行し、医療ニーズが慢性疾患を中心とするものに変化・増大していく中で、医療機関の機能分化・連携、在宅医療の充実などが求められている。診療報酬の在り方も7対1病床とその患者の数の縮小度合を重要な指標とする「病床機能の分化・連携」が推し進められている。
こうした医療環境の中で、これからの地域医療に向けた病院の取り組みはどうあるべきか――。東京女子医科大学東医療センター(東京都荒川区)、済生会熊本病院(熊本市)、永生病院(東京都八王子市)の取り組みについて、このほど東京と大阪で開催された「NEC医療セミナー2016」で発表された。
東京女子医科大学東医療センターの取り組みとは…
大学病院でありながらクリニックを開設し、在宅医療部を持つ東京女子医科大学東医療センター。「1934年に、東京女子医学専門学校の学生と職員が一体になって無料診療所を開設したことが、創立の原動力になっている。地域医療への貢献が東京市(当時)の外れだった当地で始まったことが、大学病院で希な訪問診療を行う『在宅医療部』として受け継がれている」。病院長の上野惠子氏は、大学・急性期病院でありながら在宅医療部がある理由をこう説明する。
医師、看護師、事務員それぞれ1名が訪問診療・看護を実施しているが、同センターの在宅医療部の役割を上野氏は、医学生や臨床研修医、看護学生など医療従事者の在宅医療についての教育、荒川区が実施する重症心身障害児を対象とした留守番看護師派遣事業の研修会として在宅医療を担う人材の育成、在宅医療に向けた退院支援などを挙げた。小規模な診療部門でありながら、「大学・急性期病院が在宅医療部を持つことは、教育機関として非常に意義あることと考えている」(上野氏)と強調した。
一方で、古くから地元の身近な医療機関として存在し、また小児研修医を多く受け入れていたこともあり、コンビニ受診の増大で小児科部門が疲弊するという課題や紹介率・逆紹介率が長年低迷するといった問題を抱えていた。「2013年4月に病院長に就任したとき、やはりわれわれの使命は高度急性期病院として生き残ることと考えた」(上野氏)とし、城東地区医療連携フォーラムを充実させるなど、試行錯誤しながら地域連携強化を推進した。その結果、2014年後半以降、紹介率・逆紹介率とも70~80%で推移するようになり、「2016年度に地域医療支援病院の認定を受けられる体制が整った」と述べた。