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 日本各地で地方総合版戦略を策定する中、戦略内に「生涯活躍のまち」(日本版CCRC)構想を採り入れる自治体が増えてきた。「日本版CCRC推進会議 第7回」(2016年3月11日)では、地方自治体の具体例として、山口県山口市 総合政策部企画経営課成長戦略推進室 室長の金子隆明氏が登壇し、その取り組みを発表。そして、岩手県八幡平市でリゾート施設型CCRCの「オークフィールド八幡平」を運営するアーベイン・ケア・クリエイティブ 企画開発室 室長の山下直基氏が講演した。

「タウン型」CCRCを目標に

 多くの自治体同様、山口市における生涯活躍のまちへの取り組みはまだ始まったばかりだ。2015年、「山口市まち・ひと・しごと創生総合戦略推進会議」が発足し、同年11月から「生涯活躍のまち構想検討専門委員会」がスタート。さらに2016年1月には「『しごと』『ひと』好循環づくり専門委員会」を設置した。

山口県山口市 総合政策部企画経営課成長戦略推進室 室長の金子隆明氏
山口県山口市 総合政策部企画経営課成長戦略推進室 室長の金子隆明氏
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 どちらの委員会も、産官学に加え、金融、マスコミが参加した「産官学金言」型。生涯活躍のまち構想検討専門委員会では、「東京圏などからのアクティブシニアの移住を現行よりも毎年50人増やす」というKPIを掲げ、それぞれの役割分担・課題との共通認識を図る。「しごと」「ひと」好循環づくり専門委員会では、山口大学が実施しているCOCプラスとの連携、商工会議所と連携したサービス産業の活性化などを具現化していく。山口市はこれらの取りまとめ役として、各方面のコーディネートを行なう。

 金子氏は山口市の現状として「実は65歳以上はここ数年、毎年50~60人の転入超過なのだが、おもに周辺自治体からの転入。東京圏からは1桁程度であり、呼び込んだ実績がほとんどない」と語った。その一方、日本創生会議において医療・介護の受け入れ能力がある準地域として指定された事実を挙げ、「医療・福祉基盤はある程度そろっている」(金子氏)とした。

 本格的な組織の立ち上げ後に国から生涯活躍のまち構想が公表されたこともあり、各方面に示すためのガイドラインとして、山口市ではまず構想の素案に着手。「この素案を2月の会議で提示し、各機関に配布してさまざまな意見をもらった。2016年4月からはモデル事業主体を募集し、ヒアリングを通じて具体的な方向性を整理していきたい」(金子氏)。市では、2016年10月に構想の成案策定を目指す。構想にふさわしいモデル事業に関しては交付金を獲得しながら支援していく。

 今回の素案は国の方針に則った内容で、次の3本柱に据えている。すなわち、1.多世代交流、移住者との融和、連携した市民総参加、総活躍のまちづくり、2.地域包括ケアをベースにした超高齢社会を支える基盤づくり、3.多様なネットワークを活用した地域資源のブラッシュアップと魅力発信、である。山口市ならではの特色については、「豊かな自然と人々の温もりに包まれた安心・快適な、山口らしい都会暮らし」をテーマに掲げる。

 このテーマのもと、従来からの市街地、新幹線駅を構える交通結節地域、少し離れた臨海・田園地域を重点エリアに設定し、全市域の「タウン型」CCRCを目標とする。これらエリアには医療・介護施設、アクティブに活動できる施設、大学やNPOなどが存在し、インフラと人材を含めた要素があるとした。山口市ではこれらの要素をレイヤー1~3まで区分し、各地域の整備基準として示している。

 金子氏は「山口市には基盤のしっかりした社会福祉法人が数社ある。施設内にサ高住が整備済みだったり、これから整備予定だったりするところもある。例えばCCRCの先駆モデルとして名高いシェア金沢のような施設を作っていきたいという要望もある」との例を紹介した。さらにそれら社会福祉法人が農山漁村地域のまちづくりと結びつき、農山漁村の資源を活用した取り組みも視野に入れる。

 「社会福祉法人の新規事業に対する意欲は非常に高い。そこでまた新たな仕事が生まれる期待感がある。ヒアリングを重ねる中で一番感じたのが、若い世代の仕事の場を生み出しながら整備していくことにこそ意義があるという点。まだ制度構築はなかなか進まない状況だが、市民・事業者と共有する中でまちづくりを推進していく」(金子氏)。