労働組合の重要性は?
髙谷氏:健康経営を推進していく中で、労働組合の重要性が指摘されている。すかいらーくグループでは、どのような取り組みをしているのか。
酒匂氏:まず、すかいらーくグループでは65歳以降70歳までの再雇用制度を新設した。このように高齢者が増える中では、健康を重視することが最大の課題となる。そこで会社負担で施策を提言している。健康経営プロジェクトの発足もその1つ。例えば正社員で健診を未受診だと本人も上司も賞与がカットされるため、当然、受診率は100%だ。そのほかハイリスクアプローチや禁煙キャンペーン、生活習慣改善運動などを実施する。
このプロジェクトメンバーに労働組合(労組)も参加し、全社一体となって健康経営を進めていく。逆に健康保険組合(健保)から労組幹部の会議に人員を派遣し、健康を語る会の開催を考えている。企業側だけではなく、多方面から取り組みをしていくことが重要だ。
健診や透析予防、重症化予防など多彩なデータの説明責任、エビデンス、医療知識などを通じて、どれだけ企業に保険者がインパクトを与えられるか――そういう意味で保険者は仕掛け人であるべきだと思う。本来ならば企業と保険者の両輪が上手くバランスを取っていかなくてはならないが、現実は健保だけ強い、会社だけ強いといったような機能不全を起こしているケースも多い。今日のシンポジウムは、その2つが融合して調和していかなくてはならないことの重要性を改めて感じさせてくれるものだった。
髙谷氏:情報伝達、社員の意識づけをしていく大きな力を持っているということで、労組が協力すれば非常に心強いステークホルダーになる。しかし大企業になるとさまざまな労組の形、考え方があるだろう。日本航空の大西会長、これについてはどのように考えるか。
大西氏:健康経営、もっと簡単に言えば皆が健康で楽しく暮らしていく基本を作っていくためには、あらゆるステークホルダーが参加すべき。もちろん労組も含めて、同じ気持ちを持ってもらい、さまざまな立場から意見が出てくる仕組みを作り上げることが大切なのではないか。
我々の企業理念の根本は「全社員の物心両面の幸福を追求する」というもの。そこで健康を追求するのは当たり前のことだ。イデオロギー論争を離れ、たとえ労組であっても同じところを目指す。非常に強力なメンバーだと思うし、賛同してもらえないような施策を打ち出しているとすれば、それは間違いになる。