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専門医制度は?

酒匂氏:続けて医師会に専門医制度について聞きたい。保険者の立場からすると、糖尿病の専門医を見つけるのに苦労するなど、非常に手間がかかるのが現状。どうにかならないものか。

今村氏:今後は個人にかかりつけ医を決めてもらい、その医師がとりあえず総合的に窓口になる動きを、日本医師会では進めている。厚労省でもかかりつけ医を評価しようという動きになってきている。

 例えば内科の中に消化器科、消化器科の中に肝臓内科など、医療はどんどん細分化してきた。そうした細分化は国民にとって必ずしも望ましい医療ではない。実のところ、糖尿病の専門医は3000人ほどしかおらず、ほとんどの糖尿病患者は地域の非専門医が診療している。とりわけ糖尿病は薬品や治療法が進化している分野。この状況の中で多くの医師会員が一生懸命努力して、自分の診療レベルを上げているのだ。世界的に見ても日本の糖尿病診療のレベルは非常に高いが、患者視点からすると見えにくいのかもしれない。

 できる限りきちんとした標準的な糖尿病診療を行っている医療機関を保険者側に知ってもらう必要があるだろう。企業、保険者が未治療者や治療中断者を見つけた際に、ただ「医者に行け」と言うだけでは適切な医療機関に行くことができない。大学病院の専門医だけを紹介してもなかなか難しい。既に病院と診療所は病診連携を進めている。今後、保険者と医療関係者が連携しながら適切な診療ができるように、情報共有を図っていきたい。

会場参加者からの質問:私は健康保険組合に関わっているが、健康経営で家族をどのように巻き込んでいけばいいか。ぜひ日本航空の大西会長に聞きたい。

大西氏:意識改革が必要だ。日本航空の哲学を社員と共有していくため、経営トップ層と月に1回、マネージメント層と2カ月に1回、一般社員と1年に4回のペースで話し合いの場を設けている。少なくとも、前に1歩でも2歩でも進めていこうというときは、あらゆるステークホルダーに参加してもらい、決して企業内では閉じないことが大事になる。

 堅い鎧はいくらでも脱がせる自信があるが、最後の薄いベールを強制して取ることはできない――これは私自身が社員と会話していて痛感することだ。最後のベールを取るかどうかは、自分が得心できるかどうかに尽きる。本当に納得すれば、薄いベールをパッと取ってくれるものだ。

 これは家庭でも同じだろう。社員が最後のベールを取っているとすれば、家庭でも同じことをしてくれるはず。なぜなら、家庭でも同じく幸せになりたいからだ。日本航空の哲学は、会社内だけで閉じるものではない。人間に共通の指標を掲げている。その意味でも、家庭にどんどん浸透していくと思っている。