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 本職の手術に劣らないほど、「遠隔医療」にのめり込んだ。ある外科医にそのきっかけを与えたのは、2002年に日韓合同で開催されたサッカーW杯だった――。

登壇した清水氏
登壇した清水氏
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 九州大学病院 国際医療部 アジア遠隔医療開発センター長の清水周次氏は、2017年9月15日に東京都内で開催された「Vidyoワークショップ ~遠隔医療の実践に向けて~」(主催:Vidyo Japan)に登壇。「国際医療教育の実践:15年間の軌跡と今後の展望」と題し、同氏が過去15年にわたって実践してきた、手術のライブ中継などを用いた国際医療教育の取り組みについて語った。

内視鏡手術で「遠隔教育」に目覚める

 清水氏は消化器外科医であるとともに、遠隔医療分野の第一人者でもある。特に力を入れてきたのは、遠隔での医療教育だ。世界各国の大学や医療機関と九州大学病院をつなぎ、症例研究や手術ライブ中継を通じた教育を実践してきた。

 きっかけとなったのは、清水氏が外科医になって10年が過ぎた1990年代、内視鏡手術が日本の医療現場に導入されたことだ。内視鏡手術は開腹手術に比べて低侵襲ではあるものの、当初は多くの医師がその効果に懐疑的だった。「腕のいい外科医ほど(十分な視野を確保するために)大きく切る、というのがそれまでの常識だった。内視鏡手術は視野が狭く、危なくてとてもできないという声が強かった」と清水氏は振り返る。

 ところがその後、整容性の高さや術後回復の早さなどから、内視鏡手術は日本でも徐々に浸透していく。内視鏡手術に長けた医師が現れるようになり、清水氏らもそうした医師の手術を見学に訪れる機会が増えた。ただし、そのために診療を休まなければならなかったり、何度も繰り返し見学させてもらうことが難しいといった制約も多かった。

 当時は、日本でインターネットが普及し始めた頃。清水氏はこのツールを手術映像の共有に使えないかと考えたという。だが当時のインターネット回線は、画像伝送品質やコストの面で、手術の教育に使える水準にはなかった。「手術中は膜の構造などがきちんと見えないと出血を招いたりする。当時の画像品質ではそうした細かい構造が見えず、外科医にとっては使いものにならなかった」(清水氏)。