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米国では既に日常臨床で活用

 ゲノム・オミックス医療の臨床応用が米国で始まった背景には、次世代シーケンサーの急速な進化がある。ゲノム解析に要するコストは従来、ゆるやかに低下してきたが「2007~2008年を境に急速に下がり始めた」。そのスピードは半導体における「ムーアの法則」を超えるという。

 この結果、米国では2010年にゲノム・オミックス医療の臨床応用が始まる。まず対象となったのは、原因不明の先天性疾患に対する原因遺伝子診断、そして薬剤を代謝する酵素の多型性検査という2つの分野だ。

 臨床現場でのゲノム解読(clinical sequencing)の最初の事例となったのは、米Medical College of Wisconsinにおけるもの。腸のいたるところに潰瘍ができる原因不明の先天性腸疾患を患っていた3歳の男児に対し、次世代シーケンサーで全エキソン配列を解読。「XIAP」と呼ぶ免疫系の異常を明らかにし、骨髄移植によって完治させることに成功した。「ゲノムを解読することで人命を救えることが分かった最初の事例」として、これを報じたメディアにピューリッツァー賞(Pulitzer Prize)が与えられるなど、全米で大きな話題を呼んだ。

 その後、米国屈指の医療機関として知られるMayo Clinicを中心に、難治性がんの中心的役割を担う遺伝子変異(ドライバー遺伝子変異)を臨床現場で同定する取り組みも始まる。こうして米国では現在、ゲノム・オミックス医療が数十の医療機関の日常臨床で実践されるようになった。