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「ランダム化比較試験」と決別

 医療ビッグデータ革命は、Population MedicineからPersonalized Medicineへのパラダイムシフトをもたらす。そしてもう一つのインパクトは、臨床研究(clinical research)にパラダイムシフトをもたらすことだ。

 従来、新しい薬剤や治療法を開発するための臨床研究には、ランダム化比較試験(RCT:randomized controlled trial)が採用されてきた。性質の似通った集団の「標本」をつくり、試験結果から統計的に「推測」するというのがその基本的考え方だ。このアプローチでは「多様性や層別化を網羅した治験集団をつくることはできず、現実と乖離した知見しか得られない」と田中氏は話す。

 そこで、ゲノム・オミックス医療やモバイルヘルスなどを通じて「実世界のデータから法則を得る」アプローチが、これからの臨床研究には必要という。バイオバンク構築などの取り組みは、そうしたパラダイムシフトへの移行段階と位置付けることができる。

 講演では、医療ビッグデータの構成要素としてEHR(electronic health record)にも触れた。ここでは、各地域で進められている地域医療情報連携に“横串”を刺して広域化することで「日本版EHR」を構築できるとした。その横串になるものとして、最低限の連携項目を定めた「ミニマム連携診療情報項目」や、連携の圏域を横断しても基礎的な医療情報を共有できる「患者共通ID番号(医療等ID)」の整備の必要性を説いた。

 医療における医療情報やITの活用は今後、「個別化(精密医学や生涯にわたる健康モニタリング)」「知識化(ビッグデータから知識へ)」「広域化(全国医療情報連携やEHR)」という3つの方向で進む。その変化の胎動は「既に始まっている」とした。