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 「今日に至る医療機器産業の形成過程と今後の課題」。こう題して、医療機器センター 専務理事の中野壮陛氏が日本医療機器産業連合会による平成27年度第2回講演会(2015年10月30日)で講演した。

 医療機器センターでは、2010年に医療機器産業研究所を設置、医療機器業界のリサーチペーパーを発行している。今回のテーマは2015年7月に発行したリサーチペーパーに即したもので、1960年代から現在までの変遷を追いながら、主に国内医療機器市場の動向について語った。

医療機器センターの中野氏
医療機器センターの中野氏
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 2013年の国内医療機器市場は約2.7兆円の規模であり、およそ30年前の1984年と比較して約3倍にまで成長。中野氏は、リーマンショックなどの大きな不況にさほど左右されることなく、緩やかに成長しているとした。

 一方で国内企業と海外企業のシェアを比較すると、1984年時点で海外企業の割合は約20%だったにもかかわらず、2013年には約50%まで成長。国が医療機器産業を成長分野と位置づけているものの、「海外企業のシェアがどんどん伸びている」(中野氏)と述べ、その構造の現実を披露した。

 現在、国内企業が強い医療機器分野は医用X線CT装置、超音波画像診断装置、臨床化学検査機器、血液検査機器など診断系・検査系の機器。しかしトレンドは年を追うごとに治療用機器へとシフトし、この30年で治療用機器の国内市場シェアは27%から50%へ、逆に診断用機器は32%から19%へと変化した。これを受け中野氏は「医療ニーズが診断から治療へ移ってきている」とした。

 中野氏がこれまでのリサーチなどから得た推測では、国民医療費と医療機器市場には相関関係があり、グラフにすると美しい右上がりの直線を描くという。その分析では国民医療費の平均6.3%が医療機器の国内市場に当たると見ており、「この傾向は30年余りずっと続いている。ブレがほとんどない」(中野氏)とした。こうした傾向は米国、欧州でも見られ、医療費のおよそ6%前後が医療機器市場規模に該当する。