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 医療ICTを中心とする環境の変化は、製薬企業にどんな影響を与えるのか――。2015年10月19日に東京都内で開催された「医療の未来と製薬マーケティング~『医療人としての貢献』を通じたマーケティング基盤構築~」と題するセミナーにおいて、電通 ビジネス・クリエーション・センター シニア・コンサルティング・マネージャーの比留間雅人氏が、製薬マーケティングの観点から語った(関連記事1,関連記事2)。

電通の比留間氏
電通の比留間氏
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 製薬企業をターゲットとした今回のセミナーでは、「環境変化に適合したマーケティング基盤/事業基盤の再設計」という問題提起がされていた。この背景としては、「ブロックバスター(収入源となる大型新薬)中心の競争戦略からの転換」や「訪問規制などを受けての営業戦略の見直し」、「医療・介護提供体制改革に対応した事業戦略の転換」などが挙げられる。このような状況にあって、これから積極的かつ効果的な製剤マーケティングを追求するには、「医療や介護の変革をしっかりキャッチしてマーケティングの基本を構築していくことが重要となる」(比留間氏)。

 では、医療の現場に身を置き、医療を支える「医療人」の一翼として、製薬会社はどのような形で貢献できるのか。比留間氏は、医療や介護が変革の途上にある中で、より患者に近いところで医療の効率化や最適化を進める必要があることを強調。そのためには、患者と医療(技術)とのインターフェイスの再構築に注目し、その中で自社のマーケティング基盤を構築していくことがポイントとなる。

 しかし、患者と医療(技術)とのインターフェイスの実態を見てみると、さまざまな課題があることが分かる。例えば、患者には「疾患があっても受診しない」「受診後の治療に意欲がわかない」などの課題が挙げられる。これは「知らないからやらない」のではなく「知っているからやらない」というケースも多くあるため、受診や治療への意欲を喚起する取り組みが重要となる。

 一方で、医療側では、医師の役割や機能の再定義にともなう変化が起きている。この変化にあって、ポイントとなるのは「連携の強化」。とくに、「かかりつけ医が担う責務は非常に大きくなる」(比留間氏)ため、他の疾患の治療薬との相性や診察頻度などを加味して薬や治療を選択する必要が出てくる。さらに、在宅においても服薬や生活行動の管理が重要になるため、さまざまなサポートのニーズが出てくるとみられる。

 また、医療現場においては医療ICTやRWD(リアル・ワールド・データ)の導入が叫ばれているが、「具体的に誰がこれを作っていくのか」という点については模索中といえる。現状ではICT系の企業が中心となって議論を進めているが、具現化にあたって「そろそろ製薬企業の出番があるのではないか」と比留間氏は語り、これも貢献のひとつとして挙げた。

 ただし、「医療人として貢献しても、すぐに売り上げが上がったり利益ができるわけではない」(比留間氏)。製剤マーケティングを続けていくなかで「足りないリソース」に注目し、それを「自社でどの担うのか」の観点から貢献していくのが合理的といえる。