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“石ころ”から“ダイヤモンド”を見つけた

 これまでに携わった医工連携プロジェクトで、加藤氏が「特にうまくいった」と振り返るのが、村田製作所が、ある医療機関の呼吸療法チームを巻き込んで行った自動カフ圧コントローラー「SmartCuff」の開発である。

 このプロジェクトで着目したのは、気道を確保するために口や鼻、気管から体内に挿入する気管内チューブ。気管内チューブの先端に付いているカフに空気を送り込んで膨らませることにより、気道とチューブの隙間をなくし、換気量を確保する。

 ただし、カフは膨らみが大きすぎると気管粘膜障害を起こし、膨らみが足りないと分泌物などが気道に流入して人工呼吸器関連肺炎(VAP)を引き起こす可能性がある。そのため、適切なカフ圧を管理することが必要になるというわけだ。そこで同氏らは、適切なカフ圧を設定するSmartCuffの開発に乗り出した。

 実は、SmartCuffは「めちゃくちゃ後発品」と同氏は語る。自動カフ圧計は、これまでにも複数存在していたが、従来品は大型で高価なものばかりだった。そこで同プロジェクトでは、たばこ1箱分の大きさまで小型化し、乾電池2個で2週間使えるようにした。

 さらに、従来はモーターを使っている製品が多く、使うたびに音が鳴ってしまっていたが、SmartCuffは圧電素子を使用しているため、稼働中も静かだ。ベッドサイドに置いても音がしないので、「患者に取っても不快ではない」と加藤氏は言う。

 価格設定にもこだわった。医療機関では、10万円以下の物品は備品として扱える。院内の書類手続きの手間を減らすためにも、「備品扱いできる設定にした」(同氏)。

 実は、このプロジェクトはニーズ先行型ではなく、村田製作所が加藤氏に「マイクロポンプの技術を使って医工連携に参入したい」という話を持ち掛けたところから始まった。最初は、「これ、あかんパターンや…」と思ったと同氏は振り返る。

 このシーズがどこに生かせるかは分からなくても、できるところまでやってみようと考えた同氏らは、とにかく多くの案を出すことにした。リスクを減らすために、数多くの“石ころ”の中から“ダイヤモンド”を探す方法をとることにしたという。その結果、SmartCuffを開発するに至ったというわけだ。