FIT電気に「環境価値」はない

 一方で、こうした「再エネ比率」競争に異を唱える声もある。各社が再エネ電源の軸に据える「FIT電気」には、実は「環境価値」がないからだ。FITを利用した再エネは電気利用者すべてが賦課金を負担して支えており、「FIT電気の環境価値は全電気利用者に属す」とされた。このためFIT電気の活用に際しては、こうしたFITの仕組みを説明し、「環境負荷の低い」「グリーン」などの環境価値を誤解させる表現は使えないことになった(図6)。

図6●経済産業省の公表した「電力の小売営業に関する指針」に例示されたFIT電気の表示方法(出所:経済産業省)
図6●経済産業省の公表した「電力の小売営業に関する指針」に例示されたFIT電気の表示方法(出所:経済産業省)
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 ネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ケ根市)の伊藤敦社長は、「環境価値のないFIT電気の比率を高めたところで、どんな意味があるのか」と、FIT電気の活用をウリにすることに懐疑的だ。「消費者がFIT電気の価値を誤解してしまうと、今後、増えるはずのFITを利用しない再エネの普及を阻害する恐れがある」(伊藤社長)と、危惧する。

 各社の電気料金プランの比較サイトを運営するエネチェンジ(東京都墨田区)の巻口守男副社長は、「電気料金プランの環境性を定量的に比較するなら、電源構成から計算するCO2排出係数が最も明快ですっきりする」と話す。実際、同社では、各社の公表する電気料金プランの排出係数を収集し、CO2排出の少ない順にランキングする準備を進めている。温暖化対策法でも、電気事業者は排出係数を報告する義務があるため、データの収集は可能になる。

 実際、すでに排出係数の低いことをアピールする動きも出てきた。大阪いずみ市民生活協同組合(大阪府堺市)は、組合員の一般家庭向けに電力小売りを開始した。「現在より電気代が安くなり、調整後CO2排出係数が低く、環境に配慮した商品」を打ち出した。

 大阪いずみ市民生協は、現在3カ所のメガソーラーを運営し、今年9月には京都府亀岡市に8.5MWのメガソーラーの稼働を予定しており、4カ所合わせると11.8MWに達する。稼動中の3カ所のメガソーラーの電力は、グループ企業を通して自社施設に供給している。

 4月からの組合員向けの電力小売事業では、大和ハウス工業グループのエネサーブから電源を調達する。エネサーブの2014年度CO2排出係数(調整後)は、0.206kg‐CO2/kWhと、全事業者の平均値0.579kg‐CO2/kWhに比べて大幅に少ない。