太陽光を優先的に活用

 一方、HVDC給電システムでは、交流を受電して直流に変換後、蓄電池を活用し、直流分電盤を介して、直流の集中電源装置から「DCサーバ」に電力を供給する(図5、図6)。「DCサーバ」とは個別の電源ユニットを持たない製品で、直流12Vを直接、入力する。

図5●データセンター内の直流分電盤(出所:日経BP)
図5●データセンター内の直流分電盤(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図6●個別の電源ユニットを持たないDCサーバ(出所:日経BP)
図6●個別の電源ユニットを持たないDCサーバ(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 石狩データセンターでは、直流で受電した太陽光の電力(DC380V)を、HVDC給電システムの直流回路に供給し、優先的に利用する。同センターでは、給電状況に応じて、太陽光と商用電力、そして蓄電池からの放電という3つの電源を優先順位に従ってサーバに供給している。最優先で利用するのは太陽光発電所から送電した直流380Vの電力。次に、太陽光発電所が発電していない場合、電力会社から受電した交流を変換した直流340Vを活用する。太陽光が発電せず、商用電力が停電した場合には、蓄電池からの直流264Vを使う(図7)。

図7●3つの電源を優先的に活用する仕組み(出所:さくらインターネット)
図7●3つの電源を優先的に活用する仕組み(出所:さくらインターネット)
[画像のクリックで拡大表示]

 これら3つの電源は、優先順位が高い電源ほど電圧を高く設定している。その結果、能動的に電源選択を制御しなくても、太陽光→商用電力→蓄電池という優先順位で、自律的に集中電源装置からサーバに供給されるという。

 さくらインターネットによると、HVDC給電システムを採用することで、システム全体の電力効率は15%向上し、ランニングコストも下がるという。ただ、直流12V入力を前提にしたDCサーバの生産量がまだ少なく、割高なことが課題という。今後、HVDC給電システムの採用が増え、DCサーバの生産量が増えれば、初期投資も含め、経済性がさらに高まる可能性もある。