第2フェーズは1kmまで延伸
高温超電導ケーブルの実用上の課題として、冷却による熱収縮の問題がある。一般的にケーブルや断熱2重管は、室温からの冷却によって約0.3%程度収縮する。500mケーブルでは、1.5mにもなる。そこで、ヘリカル(らせん)状に変形して伸びを吸収する構造に加え、ケーブルの両端を固定せず、レールに乗せた。こうすることでベローズ(伸縮部)を介して両端がスライドすることで、収縮を吸収できる(図10)。
同組合が石狩市で実施する実証事業は、大きく2つのフェーズからなる。第1フェーズでは、太陽光発電設備とデータセンターを約500mの高温超電導ケーブルでつなぎ、太陽光発電の電力を直接、データセンターで活用する。第2フェーズでは、2018年3月末までに約1kmの超電導ケーブルを敷設し、実験的に直流送電する。
すでに石狩データセンター近くの用地では、1kmの超電導ケーブルを敷設する工事が始まっている。全長約500mの敷地内を折り返すことで、1kmの距離を確保する。太陽光とデータセンター間の直流送電での成果を生かしつつ、さらに長距離での経済性を高めるなどの試験を行う計画という。
第2フェーズでは、新タイプの超電導ケーブル管を採用する。これは、断熱2重管内のケーブル配管を輻射シールドで覆うことで、さらに断熱効果を高める。送電路の熱損失は0.7~1.0W/mまで減るという。
また、超電導ケーブル管は、地上に設置する。本来、温度変化の少ない地中埋設が好ましいものの、実証予算の制約から埋設を断念した。ただ、地上設置となったことを生かし、ケーブル管周囲の環境変化による送電性能への影響などを検証する予定という(図11)。