「ソーラーシェアリングは希望の星」

 市民エネルギーちばでは、2014年9月に初めて営農型太陽光を稼働させた。アメリソーラー製のパネル(70W/枚)を約500枚設置した。パワーコンディショナー(PCS)はオムロン製(5.9kW)を5台導入した。売電単価は36円。建設費の約820万円は、一般の賛同者から出資を募り、「市民共同出資型」にした(図8)。

図8●2014年に市民出資で建設した低圧連系の営農型太陽光(出所:日経BP)
図8●2014年に市民出資で建設した低圧連系の営農型太陽光(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 匝瑳市で農業を営む椿代表は、このソーラーシェアリング1号機から携わってきた。開畑地区は、文字通りかつて山林を造成して畑地にしたが、粘土質の土壌で地力が弱い上に水はけが悪い。野菜など付加価値の高い作物を作れず、農業の収入だけでやっていくのは厳しいという。「耕作放棄地が多いのもそのため。そこで、野立ての太陽光発電所の建設を目指したが、公的な資金で農地化した農業振興地域のため、農地転用できずに諦めた経緯があった」と、椿代表は打ち明ける。

 そうしたなか、ソーラーシェアリングを推進していた東氏と出会い、連携して開畑地区でのソーラーシェアリングの設置に取り組んできた。「農業が行き詰まっていた開畑地区では、ソーラーシェアリングが希望の光になっている」(椿代表)という。

 東氏によると、従来型のソーラーシェアリングの課題は、「農地の所有者と発電事業者、そして営農従事者が別々であること。農家の多くが保守的でソーラーシェアリングに懐疑的で、そもそも農業従事者が減っている中、ソーラーシェアリングの設備を建設しても、太陽光パネルの下で営農する人が見つからない」という。

 市民エネルギーちばでは、農家自身が自分の農地に太陽光パネルを設置し、その下で農業を行うことを目指している。匝瑳市のソーラーシェアリングは、そうした理想に近づいているという。