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伸縮性のバイオ発電システム4)

伸縮性酵素電極

 伸縮性(ストレッチャブル)電極の開発はウェアラブルデバイス関連の主要課題であり、多様な提案がなされている。金属や炭素の微粒子もしくはホイスカなどをエラストマに練りこんだ導電性ゴムが典型例であるが、これらは酵素電極の基材には適さない。大量の酵素を固定して溶液中で反応させるためには、電極表面のナノ構造化が必要であり、活性炭やCNTなどを修飾して実効比表面積を増大させる必要がある。我々は、これらナノ構造体の“もろさ”に配慮して、ストッキングなどの布を電極作製に用いている。編み目構造の変形によって正味の伸長が得られるため、各繊維表面のナノ構造体へは大きな応力が負荷されないと考えた。

 市販のストッキング片に対して2段階のCNT修飾を行った。まず、界面活性剤で分散したスーパーグロースCNT(SGCNT)を塗布し乾燥させる。SGCNTは(国研)産業技術総合研究所の畠グループが開発した200μm程度の長い単層CNTであり5)、結晶度も高いため導電性に優れる。さらに、酸処理して活性化した比較的短い(5μm程度)市販の多層CNTを修飾する。この第2のCNT層は酵素修飾に適した表面構造を与えることがわかっている。CNT修飾によって電極化したストッキングにフルクトースデヒドロゲナーゼ(fructosedehydrogenase:FDH)を吸着させて酵素アノードを調製した。図2(a)に示すように、フルクトース200mMを含むマッキルベイン緩衝液中で約5mAcm-2(0.6V)という電流密度値が得られている。この結果はCNTの2層構造によって初めて得られる。この電極を10%もしくは50%伸長させて、酵素反応電流の変化を計測したところ、初回の伸長で電流低下が生じた後は30回の伸縮操作を通じて安定であった。SEM観察の結果、初回の伸長でストッキング繊維の交点においてCNT層にヒビが生じていることがわかった。しかし、繊維表面のCNT層には全く破壊が起きておらず、その後は安定な性能を示す。

図2 (a)FDHアノードおよび(b)O<sub>2</sub>カソードの電流- 電位曲線(10 mV/s)と伸長による電流値変化。
図2 (a)FDHアノードおよび(b)O2カソードの電流- 電位曲線(10 mV/s)と伸長による電流値変化。
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 図2(b)には、カソード電極によるO2還元特性を示す。酵素にはビリルビンオキシダーゼ(bilirubin oxidase:BOD)を用い、酵素修飾後に、さらに、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)とCNTの混合物を塗布して表面を撥水(はつすい)化するのがアノード電極との違いである。この撥水化処理によって溶液の過度な浸透が抑制され、液相(溶液)、気相(空気)、固相(酵素電極)からなる3相界面の形成によって安定な特性が得られる。電極性能は、初回の50%伸長によって1mAcm-2程度に低下し、その後30回の伸縮操作に対しては安定であった。