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本記事は、応用物理学会発行の機関誌『応用物理』、第84巻、第9号に掲載されたものの抜粋です。全文を閲覧するには応用物理学会の会員登録が必要です。会員登録に関して詳しくはこちらから(応用物理学会のホームページへのリンク)。全文を閲覧するにはこちらから(応用物理学会のホームページ内、当該記事へのリンク)。『応用物理』の最新号はこちら(最新号の概要PDF)。

強誘電体ゲートトランジスタは、高速動作・高書き換え耐性・低消費電力を併せもつ。本稿では、多値記録性能や動作ダイナミクスを利用した応用展開として、衝撃記録素子および脳型デバイスへの応用について解説する。

 読者の方は1日にどれほどの電子情報を生みだし、そして記憶媒体に記録しているだろうか。記憶媒体の一翼を担い、今後も需要が見込まれるのがフラッシュメモリに代表される半導体メモリである。数種類の半導体メモリがあるが、本稿では高速動作・多値記録可能・低消費電力という特徴をもつ強誘電体メモリ、特に強誘電体ゲートトランジスタ(Ferroelectric-gate Field-Effect Transistor: FeFET)について取り上げる。

 強誘電体とは図1に示すように、外部電界によって結晶中のイオンが変位することで電荷の偏りが起こり、分極を生じる材料である。分極の向きは外部電界により反転でき、外部電界がゼロの場合でも分極を保持することが可能である。この状態の違いを記憶データに対応させ用いるのが強誘電体メモリである。強誘電体における分極反転現象は1ns以下で起こるため1)、データ書き込み時の消費エネルギーが小さいという特徴をもつ。さらに書き換え耐性に優れるといった利点も併せもつ。つまり、強誘電体メモリは高速動作・高書き換え耐性・低消費電力を併せもったメモリ素子である。

図1 強誘電体のイオン変位と分極。イオンは外部電界によって変位が起こる。
図1 強誘電体のイオン変位と分極。イオンは外部電界によって変位が起こる。

 強誘電体メモリには大きく分けて2つの構造がある。1つは図2(a)に示す強誘電体キャパシタをメモリセルに用いた構造(キャパシタ型)である。これまでに、この構造を用いたFeRAM(Ferroelectric Randam Access Memory)が各社から製品化され、非接触ICカード、RFタグ、認証用IC、マイコン、セキュリティ分野など、広く使用されている2)

 もう1つは図2(b)に示すFeFETをメモリセルに用いた構造(トランジスタ型)である。FeFET は強誘電体をMOS 電界効果トランジスタのゲート絶縁膜部分に使用している。こちらはまだ研究段階であるものの、前述のキャパシタ型に比べ信号比が大きいことや、微細化に向いているなど大きな利点を備えている3)

図2 強誘電体メモリの主なタイプ。(a)キャパシタ型,(b)トランジスタ型(FeFET)。
図2 強誘電体メモリの主なタイプ。(a)キャパシタ型,(b)トランジスタ型(FeFET)。
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 FeFET のアプリケーションとしてこれまで考えられてきたのは、非接触ICカードなどに用いられるLSI 混載大容量メモリである。これに対し最近では実用化を見据え、FeFET の特徴を生かした新しいアプリケーションが種々考案されている4)

 本稿では、アプリケーションへの応用例を2つ紹介する。