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人工視覚デバイス――フレキシブル&インテリジェント電気刺激

 人工視覚(Retinal prosthesis)技術は、疾患などを原因とする失明、あるいは失明に近い患者さんに、視覚神経系への電気刺激によって代替視覚を提供しようとするものである。現在までに、欧米では医療機器認可されるものが出始めた。我が国においても、大阪大学医学部および(株)ニデックを中心として、1年間にわたる臨床研究が実施されるなど、精力的な研究が続けられている。このプロジェクトにおける臨床研究では、ニデック製のバルクPt 電極アレイが利用されているが、将来的な多点化にはCMOS 集積回路を搭載した刺激電極アレイが必要であると考えられ、我々はその開発に取り組んでいる。

 2次元的なパターン刺激のための電極点数が増えると、個々の電極から配線を取り出す単純配線方式では実現困難となる。このことは早くから認識されており、CMOS 集積回路によるマルチプレクサに搭載する方法が検討されてきた。その際に問題になるのが、剛直なCMOS 集積回路チップを搭載しながら網膜にフィットした刺激デバイスを実現する方法である。我々はCMOSチップを小型化し、フレキシブル基板上に適当な間隔で配置する「マルチチップアーキテクチャ」を提案・実証してきた2~4)

 図1に、我々が開発してきたCMOSチップ搭載型フレキシブル網膜刺激デバイスの構造を示す2~6)。以下、3つの世代のデバイス構造について解説しながら、技術的ポイントを論じる。なお、これらのデバイスの用途は必ずしも網膜に限定されるものではなく、脳や、体の各部の神経系で利用できるものである。

図1 開発した人工視覚向けフレキシブル神経刺激デバイス
図1 開発した人工視覚向けフレキシブル神経刺激デバイス
(a)第1世代:9極チップ型2〜4)、(b)第2世代:スマート電極型5,6)、(c)第3世代:チップ内蔵スマート電極型。
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