林に近い4エリアに多数が飛来
鷹匠は元々、タカを使って獲物を捕らえる「鷹狩り」のために、タカを飼い、訓練している。カラスなどの「追い払い」は、害鳥を捕まえるのではなく、カラスにタカの姿を繰り返し視認させることで、カラスが近づかなくなる効果を狙ったものだ。
別府さんは、タカによる害鳥駆除を先駆的に事業化したグリーンフィールド(大阪市)に相談し、2017年夏から依頼することになった。同社には、7人の鷹匠が在籍し、タカによる害鳥の追い払いに従事している。すでに栃木や兵庫など数カ所のメガソーラーで、カラスの駆除に成功した実績もあった。
「鳥取・米子メガソーラー発電所」でのカラスの追い払いは、ベテラン鷹匠の安井寛さんが担当することになった(図3)。
安井さんは、2017年9月、米子市のサイトを訪れ、カラスの状況を調べた。カラスは、メガソーラー敷地内でも、森林の隣接する4エリアに多く飛来し、最も多い時には、500羽にも達していた。また、朝、昼、夕方と、時間帯によって飛来する群れが異なっていた。
そこで、最終的にすべてのカラスの群れを追い払うために、最も効果的なタカの飛ばし方を検討した。まずは3カ月をめどに、1週間に2回、1日約6時間、タカを飛ばすことにした。時間帯やエリアによって群れが異なるので、期間によって場所と時間を変えた。工事開始前の早朝5時半にサイトを訪れたこともあったという。
安井さんは、乗用車にタカを入れた木箱を乗せてメガソーラーに来る。サイト内の目星を付けた場所で、架台やアレイにとまっているカラスや、隣接する林に潜んでいる群れに向かって繰り返し、タカを放って威嚇した。1日に飛ばす回数は約60回になるという。
森林生態系の頂点に位置するタカに対して、カラスは歯向かえず、縄張りを放棄せざるを得ない。「メガソーラー内で何度かタカの姿を見せることで、新たにタカの縄張りになったことを認識させると、群れごとほかの場所に移動していく」(安井さん)という(図4、図5、図6、図7)。