鷹匠のクルマが来ただけで飛散
タカの効果はてきめんだった。「たった1羽のタカが飛来したことで、数百羽ものカラスが一斉に飛び去っていく様はまさに壮観で、こんなに威力のあるものかと驚いた」と、鷹匠の仕事ぶりを見ていた別府さんは振り返る。タカを飛ばし始めて1~2カ月後には、「タカを乗せた安井さんの車が近づいてきただけで、カラスが飛び去っていくようになった」という。
カラスは大変に頭が良く、同じ車種でも、安井さんの乗った車以外は、全く反応しないことから、運転手かナンバープレートを覚えているのではないかという。「タカによるカラスの追い払いは、こうしたカラスの賢さを利用したもの」と、安井さんは言う(図8)。
例えば、タカ以外にトビもカラスより大型で、縄張りの順位では上位に位置する。ただ、トビはカエルなど小動物を除き、死んだ動物しか食べない。これに対しタカは、トビと同程度の大きさだが、ウサギやカラスなど生きている大型動物を襲って仕留め、捕食する。
カラスは、そうした生態をよく知っていて、トビにはそれほど恐れず、トビの縄張りに群れで侵入して、エサを横取りすることさえあるという。一方、タカへの恐れは強く、「どんなに数の多い群れであっても、たった1羽のタカが現れれば、一斉に飛散し、その場所をよく覚えていて、しばらくは近づかない」(安井さん)という。
最初の3カ月で、メガソーラーに飛来していたほとんどのカラスの群れに対し、こうしたタカによる追い払いを行い、まとまった数のカラスの飛来はなくなっていったという(図9)。その結果、心配していたカラスによるパネルへの被害は、ほとんどなかった。
そこで、その後3カ月は、週1回に頻度に減らした。「一度、メガソーラーから追い払われた群れも、場合によってはまた偵察に戻ってくることもあり、その際にまたタカがいれば、本気で諦めてほかに移動していく。また、新しい群れがメガソーラーに飛来してくることもある。このため、3カ月以降も定期的にタカを飛ばして、カラスのほかへの移動を確実なものにする必要がある」(安井さん)という。