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本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第118巻第1164号(2015年11月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

[1]はじめに

 デジタルカメラ、DVD、光通信デバイス、スマートフォンなどの情報・デジタルデバイスには非球面形状の光学部品が用いられるが、その光学特性と機能の向上のため、高傾斜角を持つ高NA(開口数)化や自由曲面化、複雑形状化、そして高精度化のニーズが高まっている。

 こうした光学部品とその成形金型は、超精密加工(切削、研削、研磨)によって造られる。これは汎用加工と異なり、計測技術が重要な位置を占める。計測は加工精度の保障だけでなく、工作物の加工形状計測データに基づき、工具の情報(位置、形状、摩耗)、加工抵抗と熱による工作物の変位の情報を分析し、補正加工を繰り返し加工精度の究極的向上を図る。

 超精密加工は加工技術に計測技術を付加し、工作機械の母性原理の限界を超える加工領域を目指すことと定義できる。本稿では形状の超精密な計測と機上計測について解説する。

[2]国際標準化機構(ISO)の動き

 非球面形状の計測法は以下の3つに分類できる。

●接触式計測法
 被計測面の工作物面上を小さな曲率半径の触針が倣いながら走査し、計測面の形状を計測する。計測精度を上げるには、[1]接触圧を小さくして変形を最小限にする、[2]横剛性を高くし、プローブの横方向の変位を最小にする、[3]触針と測長部の間の熱変形を最小にする、といった方法がある。筆者らは熱膨張係数が小さなセラミックス(サイアロン)で剛性の高いエアスライダーを用い、接触圧を小さくすることで傾斜角の大きな非球面形状の高精度測定を行っている。

●レーザープローブ走査式計測法
 レーザー光などを被計測面上に走査し、その偏差を計測評価する。通常はレーザー光の入射角が照射面に直交しなければ計測できず、曲面計測には向かないが、被計測面で生じた散乱光の一部の戻り光を利用して対物レンズの位置と計測部の位置を一定に保ちながら走査し、対物レンズの変位から自由曲面を計測するレーザープローブヘッドが開発された。筆者らはこの計測ヘッドを超精密機械に搭載し、非球面形状を機上計測している。