自然災害リスクは、ある程度受任すべき範囲

 あらゆる自然災害リスクから、20年もの事業期間、何ら支障なく太陽光発電所が運営できるように対処する義務がAMにあると解釈することはAMに酷に過ぎると考えます。

 特に、がけ地や法面に設置される太陽光発電所の場合には、崖崩れなどのリスクは、出資者や営業者は自ずとリスクとして認識すべきであり、全てAMにお任せしていれば良い、ということにはなり得ません。

 そういった意味では、AMは、あくまでも投資家に対して投資用資産の運営の助言をする立場であり、自然災害リスクを認識した際に、当該リスクの説明を営業者に対して実施すれば必要にして十分であろうと考えます。

 他方で、あらゆるリスクを説明しておけば免責となるとAMが判断すると、「リスク説明をしておけばよい」と免責を得るためのリスク説明書が横行してしまうリスクもあり、営業者や出資者は、リスク回避のための出費としてどの範囲の出費をすればよいのか、が分からなくなってしまいます。

 この点、AMが説明すべき自然災害リスクは、下記の所有権に基づく妨害予防請求権が認められるか否かが問題となった判例を参考に、自然災害リスクにより太陽光発電所への「侵害が発生する危険が明らか」である場合にAMの説明義務が肯定されると解釈すべきと考えます。

 裁判例のうち、請求が認められなかった3例は、いずれも一定の侵害の危険が認められるとしながらも、「危険性が客観的にみてきわめて大きいものということはできない」、「崖崩れが生じる高度の蓋然性があると認めるには及ばない」などと判示して、妨害予防請求権の発生を否定しています。特に、裁判例3は、過去に一度崖崩れが生じたことがあるという事情があるにもかかわらず、妨害予防請求権の発生を否定しています。

 また、妨害予防請求権の発生を認めている2例についても、裁判例1は、「崩壊の恐れが十分にある」状態、裁判例2は、既に被告による侵害が一部生じている状態に至って初めて、妨害予防請求権の発生を認めています。

 この妨害予防請求権が認められるくらい、「危険性が客観的にみてきわめて大きい」場合には、AMは太陽光発電所の営業者に対して自然災害リスクの回避策についての説明をなすべき義務を負い、この義務を怠り、営業者が自然災害リスク回避策を講じることが出来なかった場合に、債務不履行に基づく損害賠償義務を負うこととなると考えます(図3)(図4)。

図3●妨害予防請求権に関する判例
図3●妨害予防請求権に関する判例
(出所:筆者の資料を基に日経BP作成)
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図4●不可抗力に関する判例
図4●不可抗力に関する判例
(出所:筆者の資料を基に日経BP作成)
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