地裁は消費者契約法の適用を肯定

 さて、冒頭に紹介した東京地裁平成30年 4月20日判決の事案では、下記のように判示して、消費者契約法4条2項の適用を肯定しました。

 原告は、Bとともに、本件契約の締結に至る過程において、本件契約により本件土地において太陽光発電システム設置の契約をすれば、本件土地の権利が原告に移転する旨説明を受けてきており、さらに、前記認定事実のとおり、平成28年5月15日に本件契約が締結された際に、被告の従業員であるCは、本件土地の太陽光事業は問題がなく、事業が円滑に進んでいる、土地の名義の移転もする旨述べていたのである。そうすると、被告は、本件契約の締結の勧誘に際して、原告が、本件契約により本件土地の権利を取得でき、本件契約に基づく太陽光事業によって収益を得られることを告げていたと認められる。

 一方で、前記認定事実のとおり、被告は、原告に対し、本件契約締結の際に、本件仮差押の事実及び登記の存在について一切述べていない。

 そして、消費者契約法4条2項における重要事項とは、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容等であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものであり、これは、契約締結時の社会通念に照らし、当該消費者契約を締結しようとする一般的平均的な消費者が当該消費者契約を締結するか否かについて、その判断を左右すると客観的に考えられるような、当該消費者契約についての基本的事項(通常予見される契約の目的に照らし、一般的平均的な消費者が当該消費者契約の締結について合意的な意思形成を行う上で通常認識することが必要とされる重要なもの)をいう。

 これを本件仮差押の事実及び登記の存在についてみると、本件契約において、太陽光パネルは本件土地上に設置されるものであり、かつ、本件土地の所有権等の使用権原も購入対象となっているところ、本件仮差押が本執行に至れば、本件契約の主目的である太陽光パネルが土地の使用権原を失い撤去されてしまうだけでなく、原告は本件土地の所有権等の使用権原をも失う可能性があるものであり(なお、実際に、後になって本件仮差押の申立人から執行文付与の申立て(甲7)をされている)、本件土地の所有権等の使用権原の評価(これに担保権を設定し融資を受けることを検討している場合には尚更である)や太陽光パネルの存続可能性、更には発電事業の持続可能性を検討し、本件契約を締結するか否かを判断するに当たって重要なものであるといえること、一般に不動産取引においても重要事項説明書に記載すべき内容とされていること(甲6)からすれば、契約締結時の社会通念に照らし、消費者契約である本件契約を締結しようとする一般的平均的な消費者が本件契約を締結するか否かについて、その判断を左右すると客観的に考えられるような、本件契約についての基本的事項であるといえる。

 そして、前記認定事実のとおりであり、本件契約より前に本件仮差押の登記がされ、被告に本件仮差押の通知がされていたのであるから、被告は本件契約締結時において、本件仮差押の事実及び登記の存在を知っていたと認められ、この事実を原告に対し告げなかったことについて、証拠及び弁論の全趣旨によっても告げないことを正当化するような特段の事情も認められないから、被告は原告に対し、本件仮差押の事実及び登記の存在を故意に告げなかったものと認められる。

 以上によれば、本件契約の締結において、消費者契約法4条2項(不利益事実の不告知)に該当する事実が認められ、原告は、前記前提事実のとおり、本件契約を取り消したから、被告に対し、既に原告が被告に支払った代金2283万円の不当利得返還請求権を有する。

 現在、消費者庁にて、消費者契約法改正に向けた議論がなされています(消費者庁の関連ページ)。

 太陽光発電をめぐっても、消費者トラブルは多く発生しており、太陽光発電に関わる事業者の皆様方には、消費者契約法改正の動向にも注目をして頂きたいと考えております。

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