司法書士が「本人確認」

 従前は、配偶者や子供が認知症の方の代わりに代筆などをして、土地売却にかかる売買契約を締結し、実行していたケースもあったであろうと思います。

 しかし、現状の不動産取引においては、決済時に、司法書士が本人確認・本人の売却についての意思確認を行い、司法書士による本人の意思確認ができなければ司法書士が登記をしてくれません。

 この司法書士による本人の意思確認の手続が浸透してからは、不動産売買契約の仲介を行う仲介業者においても、契約前に必ず高齢者の売主本人に面談し、有効な契約ができるかどうか確認するようになりました(図2)。

図2●司法書士は登記に際して本人確認・意思確認を求める
図2●司法書士は登記に際して本人確認・意思確認を求める
(出所:日本司法書士会連合会・札幌市司法書士会)
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長男の委任状なら大丈夫か?

 例えば、地主の長男が、従前、地主が事理弁識能力を有していた際に、自筆で書いた委任状を持っているとして、「父親から土地売却の委任を受けており、委任状には実印も押してある」と言っている場合、どうでしょうか?

 結論的には、このケースでも、現状、父親が事理弁識能力を欠く状況にあるのであれば、成年後見人を選任の上、成年後見人との間で売買契約を締結することをお勧めします。

 実印が押されていたとしても、本人の意思能力が売買契約締結の時点で存在しなければなりません。

 また、印鑑証明書が直近のものであったとしても、印鑑証明書を長男が父親に代わって取得している可能性もあるので、印鑑証明書の添付をもって、売買契約締結時に事理弁識能力があったことの証明にはなりません。