20年間の責任を負う不法行為に該当する瑕疵について最高裁判例の基準

 次に民法上の不法行為に当たるかどうか、を検討します。結論的にいうと、太陽光パネルの発火事故は、不法行為責任を負うこととなりかねず、メーカー・施工会社は最長20年間の責任を負います。

 太陽光パネルからの発火事故が発生した場合、建物の建築に関わる設計者、施工者、監理者等が、どのような場合に不法行為責任を負うかという論点に関し、すでに判例があります。最高裁判所による平成19年7月6日判決(判時1984・34)及び平成23年7月21日判決(判時2129・36)です。

 平成19年7月6日判決では、以下のように不法行為責任の成立の範囲を判示しました。

 「建物は、そこに居住する者、そこで働く者、そこを訪問する者等の様々な者によって利用されるとともに、当該建物の周辺には他の建物や道路等が存在しているから、建物は、これらの建物利用者や隣人、通行人等(以下、併せて「居住者等」という。)の生命、身体又は財産を危険にさらすことがないような安全性を備えていなければならず、このような安全性は、建物としての基本的な安全性というべきである。そうすると、建物の建築に携わる設計者、施工者及び工事監理者(以下、併せて「設計・施工者等」という。)は、建物の建築に当たり、契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと解するのが相当である。そして、設計・施工者等がこの義務を怠ったために建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合には、設計・施工者等は、不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである。居住者等が当該建物の建築主からその譲渡を受けた者であっても異なるところはない。」

 つまり、建築業者等においては建物の基本的な安全性が欠けることがないよう配慮する義務があり、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」があった場合には、不法行為責任を負うというのです。

 そして同じ事案の差し戻し後の最高裁・平成23年7月21日判決は上記最高裁・平成19年判決が判示するところの「建物の基本的な安全性を損なう瑕疵」の意義について、以下の通り判示しました。

 「第1次上告審判決にいう「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは、居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい、建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず、当該瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当すると解するのが相当である。」

 そしてどのような場合がこのような「建物の基本的な安全性を損なう瑕疵」に該当するかについて、以下の通り具体的に判示しました。

 「当該瑕疵を放置した場合に、鉄筋の腐食、劣化、コンクリートの耐力低下等を引き起こし、ひいては建物の全部又は一部の倒壊等に至る建物の構造耐力に関わる瑕疵はもとより、建物の構造耐力に関わらない瑕疵であっても、これを放置した場合に、例えば、外壁が剥落して通行人の上に落下したり、開口部、ベランダ、階段等の瑕疵により建物の利用者が転落したりするなどして人身被害につながる危険があるときや、漏水、有害物質の発生等により建物の利用者の健康や財産が損なわれる危険があるときには、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当するが、建物の美観や居住者の居住環境の快適さを損なうにとどまる瑕疵は、これに該当しないものというべきである。」