マルチユースで経済性を確保
このスキームの応用として、メガソーラー内の蓄電池をシェアするのではなく、蓄電池だけを系統に連系した「サービス事業者」が登場し、出力抑制分の電力量を充電して夜間に放電するサービスを事業として提供することも考えられる。ただ、「現在の法制下では、電力会社以外の事業者が蓄電池だけを系統連系することは想定されていないので、実現には、電力システム改革のなかで、制度変更が必要になる」(花田アシスタント プロジェクト マネージャー)。
また、将来的には「サービス事業者」が、工場など電力需要家の設置した蓄電池を一時的に借りて、出力抑制対策を請け負うという仕組みも考えられる。例えば、前編ではピークカット用蓄電池を導入した滋賀県米原市の三友エレクトリックを取り上げたが、同社の蓄電池をサービス事業者が「アグリゲータ」として借りて、出力抑制対策に使うということも有望になる。
電力需要家にとって、ピークカットの必要性が高いのはエアコンを利用する夏と冬。一方で、メガソーラーに対して出力制御が発動されるのは、昼間の軽負荷期である春と秋が中心になる。ピークカットで利用しない春と秋にアグリゲータに貸し、出力制御対策に活用すれば、蓄電池の稼働率が上がり、投資回収が早まる(図3)。ただ、この仕組みの実現も、やはり出力制御対策の「肩代わり」が認められるか否かにかかる。
花田アシスタント プロジェクト マネージャーは、今後、制度の見直しなどの結果、「ピークカットや出力制御対策など、1つの蓄電池をマルチユースにシェアできれば、現在の蓄電池のコストでも、十分に経済性を確保できる」と見ている。
実は、こうした「蓄電池アグリゲータ」の発展形として、FEMS(工場エネルギー管理システム)やBEMS(ビルエネルギー管理システム)などと連係したバーチャル・パワー・プラント(VPP、仮想発電所)のビジネスモデルがある。
再エネの出力増大時に需要を生み出す手法は、蓄電池だけではない。工場の生産設備や業務用冷凍庫、蓄熱槽などを稼働させれば、需要を増やすことになる。需要家にとってみれば、極めて安い電気を利用できる。一般的にVPPでは、省エネや分散電源、蓄電池を統合制御して、需要の増加に対応する制御をイメージするが、むしろ供給過剰時に「需要を生み出す」という制御にこそ電力システムとしての革新性がある。