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――継続のカギとなるものは何ですか。

 継続するためには、達成感や満足感が不可欠です。マニュアル車の運転が楽しいのは、うまく運転できているという達成感があるからです。これが喜びになる。オートマ車の運転は楽ですが、楽しさはマニュアル車のそれと次元が違います。

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 こうした考えを不便益(benefit of inconvenience)といいます。便利になることによって、本来楽しみだったことを奪われているのでないかということです。不便にすれば良いというものではなく、ユーザーが一手間を加えることができて、上達する余地をあえて残してあげるように設計することで、「うまくなれて嬉しい」という自己満足が生まれます。これが行動変容につながると考えています。

 ヘルスケアでも、「うまくできた」という達成感や満足感を仕掛けると良いかもしれません。単に歩数などの数値を測るのではなく、もっと上達する見込みのある指標ものが良いですね。

 例えば、どれだけ美しく歩けたかを評価するのはどうでしょう。歩幅や姿勢、速度などを使っていかに美しく歩けているかを評価するのです。僕はついつい猫背になりがちなので、美しく歩けているかが分かれば嬉しいですし、きっとずっと使うだろうと思います。歩行の美しさであれば、上達の余地があってセンサーなどデバイスとの相性も良さそうです。

 継続を考えるときに、ヘルスケアの壁になるのは、効果が出るのがだいぶ先であるということです。行動経済学で分かっていることですが、人は先の報酬よりも目先の利益を優先します。すぐに利益が返ってこないと動機付けにならないのです。

 「長生きしますよ」と言われてもその効果が見えるのは、何十年も先のこと。なかなかやる気になりません。長生きというのは一見良い動機付けになりそうですが、行動経済学的には目標設定として間違っています。行動変容にはすぐに効果が分かるものが好ましいのです。