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――なぜ仕掛学の道に進まれたのですか。

 もともと工学部でAIについて研究していましたが、次第に対象範囲が狭いと感じるようになりました。AIはデータがないものを分析できないからです。

 データを分析して論文を書くことよりも、もっと社会の役に立つものに携わりたいと思うようになりました。もちろんAIも社会の役に立つものですが、それまでに距離があると感じました。

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 そこで、データではなく人を対象にすることにしました。人は何を考えているか分からないし、データもありません。でも、ほとんどの問題には人間が絡んでいる。特に仕掛学は身近な問題を対象とするため、社会実装までの距離が近いのです。

 打算的な理由もあります。研究者として生きるのであれば、一つのことを極めたいと思っていました。○○の分野と言えば●●氏、と名前が挙がる人になりたかった。どうせ人生を賭けるなら上を狙いたいと思ったのです。そうすると、AIは歴史がある分野でさまざまな人が研究をしているので難しい。それなら、新しい分野を切り開こうと考えました。

――データにできないものを扱うことは難しくないですか。

 難しいというよりも楽しいと思っています。小鳥のさえずりが美しいと思う時もあれば、全く耳に入らない時もある。それは人間ならではの面白さや豊かさです。これが仕掛学に惹かれる理由だと思います。

 簡単に答えが出るような問題だったら、追求する意味もないでしょう。人間を対象にしているというのが、面白さを感じる一番の理由です。

 いろいろな人がいて、考えていることや価値観も違います。つまり、答えやアプローチは一つではありません。そこに考える楽しさがあるのです。