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――介護現場では高齢者を相手にしますが、お笑い芸人として舞台に立つときとは違う難しさはありますか。

 ウケる笑いの種類が違うことです。お笑い芸人は日頃から、子供や若者、中高年など、対象が誰なのかを想定してネタを考えていますが、舞台やテレビ番組では、子供や若者を対象にすることが多いので、切り分けて考えなくてはいけません。

 高齢者にウケる鉄板ネタは、ずばり自虐ネタです。歳を重ねるほど、容姿や体の衰えは共通の悩みのタネになりますが、同時に“あるあるネタ”にもなります。そこをいじってあげることで、「こういうことあるよね〜」と笑ってくれるのです。

 例えば、転倒予防のためのリハビリテーションをやってもらうときにこの要素を取り入れます。転倒予防には、2つのことを同時にやってもらうことが有効なので、両手を握ったり開いたりしながら、足踏みをする運動をしてもらうようにしています。

 この運動を自宅でも行なってもらうように呼び掛けるときに、「せっかく徘徊するなら、2つのことを同時にした方がお得ですよ〜」と言ってみたりします。これが結構ウケるんです。

思わず笑顔になるセミナーの様子(提供:石田竜生氏)
思わず笑顔になるセミナーの様子(提供:石田竜生氏)
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 「転倒しないために、手と足を一緒に動かしましょうね」と言うよりも、くすっと笑わせる一言の方が、気持ちを動かせるはずです。たった一言、ほんの少しの工夫ですが、取り組み方が変わる。それが、笑いやエンターテインメントの力だなと思います。

 一方、こういった笑いは、誰にでも生み出せるものではありません。よく「冗談を言って人を笑わせられる方法を教えてほしい」と言われることがありますが、これは難しいのです。

 笑顔の生み出し方は、なにも冗談だけではありません。微笑んでくれることだって、立派な笑いです。周りが笑っているから、つられて笑ってしまうこともあるでしょう。セミナーでは、笑顔の生み出し方はたくさんあるから、自分にできる方法で笑いを取り入れてほしいということを伝えるようにしています。