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――医療は、他の分野に比べてIT活用が遅れてきた。この状況を変えていけるでしょうか。

 医療に限らず、新しい技術が出てきた時はどんな世界でも拒絶反応があるものです。クラウドだって当初は、そんなやり方はあり得ないという反応が多かった。時代は確実に変わっていきます。

 現在の40~50代の医師や看護師は、比較的若いころからITに触れてきた世代。仕事上、ITをどれだけ活用しているかはともかく、一般生活者としては先端技術に関する知識を持っています。実は似たことがITツールそのものにも言えるんです。かつては法人向けのITツールが最も先端的で、それが消費者向けに派生してくるという流れでした。今はこれが逆転している。消費者向けツールの進化がどんどん進み、法人向けはそのスピードに追いつけていないところがあります。

 つまり、最先端のITツールが自分の手元にあると実感している世代が、医療の世界にも増えている。ビジネスは世の中のメガトレンドに逆行していないことがまずは重要ですが、医療へのIT活用はまさにメガトレンドに合致しています。世代交代は医療の世界にも起きていて、ITに慣れ親しんだ世代が現場の意思決定を担うようになってきたわけです。

 ただし、事業者の側も意識を変えていく必要があると思います。これまでは医療者を口説いて自分達のアイデアを受け入れてもらおうとしてきたかもしれませんが、それではダメでしょう。医療の主役はあくまでも医療者であり、彼らがやりたいことを支援するという発想がベースになくてはなりません。医療に限った話ではありませんが、ITは手段。主役はもとからあった産業の側、つまりITを取り入れようとする使い手の側なんです。

――使い手としての医療者の視点を意識することが重要だと。

 かつてHarvard Business Review誌に「IT Doesn’t Matter」という論文が載り、話題になったことがあります。まさに重要なのはITという技術そのものではなく、それをどう使うかです。

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 クラウドやウエアラブル、AI(人工知能)、ロボティクス…。こういう言葉がはやると、言葉そのものを楽しもうとする、もてあそぼうとする人達が出てくる。クラウドやAIを使えば何でも万能だと言いたがるんですよ。でも実際はそうではなくて、クラウドならクラウドという言葉に込められた考え方や手法こそが大切です。医療へのIT活用においても、そうした視点が重要でしょう。

 クラウドにせよAIにせよ、それを実現するための技術よりも、それを活用したアプリケーションやコンテンツが問われる時代です。そして、寿司や懐石料理などの食文化を見てもそうですが、アプリケーションやコンテンツという視点で見ると日本の力は世界的に見ても相当高いと思います。

 医療にもそれは当てはまる。世界中の誰もが、素晴らしい医療を受けたいと願っています。そういう優れた医療のコンテンツを、日本が世界に発信できる可能性は十分にあるでしょう。臨床だけでなく研究でも、日本はiPS細胞など世界をリードする分野がありますしね。