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この記事は日経Robotics 有料購読者向けの過去記事(2015年)の再掲載です
本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

 2015年6月に米国で開催された、災害対応を目的にしたロボットの国際競技会「DARPA Robotics Challenge(DRC)」の決勝(Finals)には、日本からも4チームが参戦した。今号ではこのうちNEDOからそれぞれ1億円の資金援助を受け、2足歩行ロボットで参戦した2チームの活動を紹介する(DRCの全体動向については本誌創刊号を参照)。

 その2チームとは、日本勢で最高となる10位に入った産業技術総合研究所のチームと、11位に入った東京大学稲葉・岡田研究室のチームである。産総研は「HRP-2」をベースにDRC向けの改造を加えた「HRP-2改」、東大稲葉研はDRCなどに向けて新規に開発した「JAXON」を用いた。

 NEDOがDRC出場チームを支援することになったのは、世界中が注目するイベントであるDRCの決勝の場において、「日本の存在感を保つため」(NEDO)だった。そもそも2013年12月に実施されたDRCの予選(Trials)には、日本からは米グーグルが買収したSCHAFT以外、出場していなかった。SCHAFTは予選で1位となるものの、その後、決勝への参加は辞退したことにより、DRCの決勝には日本からの参戦チームがゼロとなりかねない事態に陥った。

 そこで経済産業省などが主導して日本のロボット研究者に参加を打診。2014年5月ころ、NEDOの資金援助により、3チームの参戦が決まった経緯がある。SCHAFTが1位となったことでDRC自体が日本でも社会的な注目を集め、危機感が醸成された形だ。

 NEDOの補助金は2014年8月に執行され各チームに渡り、開発が始まった。とはいえ、開発期間は1年弱に限られた。そもそもSCHAFTの決勝不参加を受けた上で動き出したためだ。DRC決勝直前の2015年5月には、米国ラスベガスにDRCの決勝を想定したテスト施設をNEDOが設置。NEDOの支援を受けたチームはここに3週間ほど滞在し、実機テストを実施後、DRCに挑んだ。

防塵防滴のHRP-3は却下

 産総研がDRCに選んだHRP-2は2003年に発表したもので、やや古い機体である。それでも産総研がHRP-2を選択したのは、同研究所が持つ2足歩行ロボットの中で20台と最も生産台数が多く、交換部品などが豊富で運用しやすい機体だったためである。

図1 なぜ10年以上前のHRP-2が採用されたか
図1 なぜ10年以上前のHRP-2が採用されたか
より新しい機体もあったが、交換部品の豊富さや保守性などを重視してHRP-2を採用し、DRC向けに改造を加えた。
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