PR

 ドローンによる点検では、まずは、全長56.7mある同航空機を機首側から尾翼部分にかけて輪切りにするよう自律飛行させる。ウエイポイントは34カ所設定。1m/秒程度の速さで飛行し、電池交換なしで13分かけて167枚の画像を撮影した(図3)。撮影した画像はクラウド上に転送し、ブラウザ経由で写真を1点ずつ閲覧し、破損箇所があるか確認する。数mm以上の傷や凹みであれば確認できる。

図3 ドローンは航空機の8m上を約10分飛行し167枚の画像を収集
図3 ドローンは航空機の8m上を約10分飛行し167枚の画像を収集
自律飛行させる際に利用したドローンの管理・監視画面。全長56.7mの航空機に対し、ウエイポイントを34カ所設定。ドローンは機首から尾翼に向かって高度を変えながら左右に飛行し画像を撮影した。(ドローンからの撮影画像:エアロセンス)
[画像のクリックで拡大表示]

 今回、ドローンを空港付近で飛行させるに当たり、ドローンの飛行高度に特に注意を払った。空港周辺には、ドローンの飛行が禁止されている空間があり、これに掛からないようにするためだ。具体的には、空港の「制限表面」と呼ばれる面より上は飛行禁止である。このため今回はこの制限表面より下の、地表から18~23m未満を飛行するようにした。航空機の高さは機首から主翼にかけては地面から約8mだが、尾翼側は約17mと高くなる。これに合わせて、ドローンの高度も機首から尾翼にかけて16~20mと高度を変えながら飛行させた。

 飛行高度以外でもANAは、入念な準備を行った。空港の旅客機用監視レーダーとドローンの通信電波が干渉しないことを確認。自動飛行中にドローンと地上側との通信が途切れる可能性も想定し、2.4GHz帯のWi-Fi以外に920MHz帯の通信も用意。冗長構成とした。

 撮影した画像の確認は現状では整備士が目視で行っているが、今後はこれを画像認識技術で自動化することを視野に入れている。エアロセンスは、福島県南相馬市の除染事業において、除染除去物を覆うシートの定期点検にドローンによる画像認識を導入している。エアロセンス 取締役CTOの佐部浩太郎氏によれば、「ディープラーニングによる画像認識でシートの破損箇所を判定できるようになってきている。今回の航空機の点検においても画像データが蓄積されればこの技術を応用できる」と意気込む。

 ただし、ドローンによる航空機の点検業務を実際に運用するには、課題もある。現状はライン整備を行う駐機場では、ドローンの飛行を原則禁止している空港が多いからだ。今後、こうした規制緩和が求められる。