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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

 医療用漢方製剤の国内シェア8割以上を持つツムラが、約130億円を投入しロボットを全面的に導入した新工場を竣工させた。2016年11月から稼働を始めた静岡工場のその新造粒包装棟には、漢方製剤の造粒から充填・包装、出荷に至るまで、全ての工程にロボットの姿がある。粉末の入った大型容器を動かして装置に投入する多関節ロボット、容器を搬送する無人搬送ロボット(AGV)、製品を箱詰めするロボットなど、実に6社11種類ものロボットがそこかしこで稼働する。

 ツムラがロボットを全面導入したのは、漢方薬市場を取り巻く二重苦が関係している。医療用漢方製剤の需要は約20年間伸び続けているにも関わらず、原料の高騰と薬価の引き下げが続いているからだ。ツムラ代表取締役社長の加藤照和氏は「生産性を向上するためには、ロボット化が必須だった」と語る。

 同社はロボットによる生産工程の完全自動化で、2018年には生産量を倍増させる計画だ。静岡工場では現在、医療用漢方製剤85処方(品目)を、1日に約24トン製造し、約4万8000箱分の製品を出荷している。自社の物流センターを経由して医薬品代理店に納品し、全国の医療機関に供給している。

漢方薬市場は需要増も原価圧迫

 漢方薬市場を取り巻く環境は厳しいが、ツムラはこの状況について手をこまぬいていたわけではない。原料高騰下では仕入原価は下げられないため、加工費を圧縮する設備投資を2012年から積極的に行ってきた。同社が「2021年ビジョン」として掲げる長期経営計画のうち収益力強化の1つとして取り組んできたのが「省人化・省力化を実現する新製造システムの構築と稼働体制の強化」。それを体現したのが、ロボットを全面導入した今回の静岡工場だ。

 原料となる生薬の生産地は、約8割が中国だ。生薬のうち特に中国産の人参の価格の上昇、さらには為替変動が要因となり、原料の価格が高騰している(図1)。

図1 医療用漢方製剤市場における二重苦がロボット導入の推進力に
図1 医療用漢方製剤市場における二重苦がロボット導入の推進力に
漢方製剤の原料となる生薬の価格高騰と薬価の引き下げにより、原価率改善や生産性向上が急務となっている。従来から工場にロボットを導入し一部の作業を自動化してきたが、多品目を扱う静岡工場ではロボットによる自動化の度合いをさらに高めた。(写真:ツムラ)
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