スピードアップのために提携・出資
ZF社は2016年以降、立て続けに提携や出資、合弁企業の設立を進めている(表)。その背景にあるのが、電動化やコネクティビティー、ADAS・自動運転といった分野で「想定していた以上に技術の変化が速い」(Sommer氏)という危機感だ。
同社が現在、最も力を入れていることの一つが、「Vision Zero」と呼ぶ交通事故ゼロ、排ガスゼロの実現。そこには、従来の自動車では使われていなかった専門性の高い技術が求められる。その代表例が、人工知能(AI)や、より高度な外界センサー、大量の情報を処理する半導体とソフトウエア、クラウドなどの技術だ。同社は、提携や出資などを通じて、Vision Zeroの実現に向けて足りない技術の補完を加速させている。
実際、同社が2016年以降に提携・出資したのは、レーザーレーダー(LiDAR)の技術を持つドイツIbeo Automotive Systems社や、ソフトウエア会社のドイツdoubleSlash Net-Business社、人工知能(AI)の開発で先行する米NVIDIA社、極超短波(波長が10cm〜1m)レーダーなどの開発・生産を手掛けるドイツAstyx Communication & Sensors社、シート・内装部品を手掛けるフランスFaurecia社、そして冒頭のHELLA社である。顔ぶれを見て分かるのは、外界センサーやAI、ソフトといった機械技術以外に強みを持つ企業が大半であることだ。「ZF社では過去には、必要な技術を独自で開発していた。だが、内製には時間がかかる。スピードアップを図るために戦略を変えた」と同社Senior Manager Advanced EngineeringのGerhard Gumpoltsberger氏は説明する(図2)。
