「判断」に優れる半導体
半導体のコア技術も自前主義だ。2017年8月には、自動運転車の“頭脳”となる半導体の業界標準を狙う技術を発表した。自動運転車の動作を判断する次世代プロセッサー「データフロープロセッサー(DFP)」がそれだ(図4)。2020年代前半の実用化を目指す。
自動運転車の「判断」を担う上で半導体に求められるのが、「人の反射動作のような処理」(デンソーエグゼクティブアドバイザーの新見幸秀氏)だ。複数の条件を同時に処理し、最適解を瞬時に判断する計算能力が必要となる。消費電力も抑えなければならない。
NVIDIA社が推すGPUは「画像処理のような画一的な計算は得意だが、複雑な処理は苦手」(同氏)という特性がある。Intel社などが取り組むCPUはその逆で、複雑な処理は得意だが、処理速度が遅い。DFPは、複数の処理を柔軟に組み立てて並列動作が可能だ。
消費電力も低く、GPUと同等の性能を約1/10の消費電力で実現できるという。DFPを搭載する車載コンピューターの消費電力は「10W以下まで抑えられる見込みで、ファンによる強制空冷は不要」(新見氏)だ。
DFPの中核技術のIPはデンソーで囲い込まず、広く部品メーカーに採用を働きかける。そのためデンソーは、IPを開発し、半導体メーカーにライセンス供与する役割を担う新会社のエヌエスアイテクス(NSITEXE)を2017年9月に設立。これもコストを下げるためだ。
2030年ごろの実現を想定した基礎研究も走らせる。低消費電力化の将来技術として、ニューロコンピューティングに取り組む(図5)。人の脳を模した回路、Memristor(メモリスタ)を用いたニューラルネットワーク(人工シナプス)で、消費電力を低減しながら計算量を2桁高速化することを狙う。