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買収した欧州企業に触発

 ドイツをお手本に働き方改革に取り組むのは、DMG森精機だけではない。2020年までに「生産性2倍」と「残業ゼロ」の実現を目指して1000億円を投資する計画を打ち出した日本電産(図2)。同社代表取締役会長兼社長の永守重信氏も、ドイツをはじめとする欧州の働き方に触発されたという。

図2 日本電産の働き方改革の施策
図2 日本電産の働き方改革の施策
ロボットやスーパーコンピューターなどに計1000億円を投資して業務効率を高めるほか、英語やMBA(経営学修士)などの社員教育も進める。
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 日本電産は、この10年ほどで多くの欧州企業を買収してきた(表)。永守氏はその働き方を目の当たりにし、働き方改革の必要性を認識する。「欧州、特にドイツ企業は社員が残業をしないし、1カ月にわたる夏季休暇も珍しくないが、業績は極めて好調だ。それだったら、ドイツ企業の働き方をそのまま学べばいい。日本企業や日本人だからできないというものではないはずだ」(同氏)。

表 日本電産が買収した主な欧州企業
日本電産はもともと企業買収に積極的だったが、この10年ほどは欧州企業の買収も目立つ。ドイツやイタリアの企業が多い。
表 日本電産が買収した主な欧州企業
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 永守氏が1973年に創業した日本電産は、今や連結売上高が1兆円を大きく超える大企業となった(2016年度の連結売上高は1兆1993億円)。その急速な成長を支えた要因の1つとして、同氏は長時間労働を挙げる。「創業当初は人材も資金も大企業ほど潤沢ではなかったが、時間だけは一緒。大企業に勝つには、大企業よりも長く働くしかなかった」(同氏)。

 しかし、創業間もないベンチャー企業だった頃はまだしも、大企業となった同社が一層の成長を果たすには、長時間労働に依存した従来の働き方では限界がある。今後は、製造業のデジタル変革を見据えた新技術や新製品の開発に、これまで以上に力を注がなければならない。そのために、ロボットやスーパーコンピューターなどへの設備投資や、社員教育を推進する。さらに、働き方改革による優秀な人材の確保も併せて狙う。

 日本企業が続々と学び始めたドイツの働き方。その最大の特徴は、DMG森精機の森氏や日本電産の永守氏が指摘する通り、短い労働時間で効率的に業務をこなすことだ。しかし、その理由をドイツ人の能力や意識などに求めるのは早計である。ドイツの働き方は、個人の能力や意識に依拠したものではなく、企業や産業界全体の取り組みで実現されている。