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上司への反論も許容

 唯一の原理・原則があると考えているドイツ人は、伝統的にルール(規則)を尊重します。しかし、どのような規則でもいいわけではなく、社会全体の利益など大局的な視点で正当化されていなければなりません。例えば、格差があまり広がらないようにするという大義の下、ドイツの各州では高い税金を課し、社会的弱者救済のための扶助プログラムを展開しています。教育制度についても、初等教育から高等教育まではどの州でもほぼ無償ですし、すべての児童にそれぞれの「能力に応じた」教育を提供するためのプログラムを各州が用意しています。

 また、ドイツ人は「個人の自由」を重視します。働き方という観点でいえば、休暇など個人の自由時間を取る権利に反映されています。言い換えると、残業や休日出勤を制限したり、有給休暇の取得を促したりするのも、個人の自由を尊重するという規則に基づいているわけです。

 労働時間が限られている分、職場では集中して仕事をこなすように求められていますが、しっかりと自由時間や休暇を取っているからこそ、世界的に見ても高い生産性を実現できているわけです。実際、長期休暇の取得で仕事の疲れを癒し、リフレッシュした状態で次の仕事に臨むという良いサイクルが構築されています。

 さらに、個人の自由の尊重は、職場での上司への反論を許容する文化にもつながっています。ドイツでは、正当な理由がある場合、上司の指示に反論することが許されています。一般にドイツではトップダウンで意思決定が行われますが、このような形で部下の意見に耳を傾けることで、上司は組織の状況をより正確に把握できます。このことも、迅速な意思決定や高い生産性に貢献しているといえます。

 ただし、「唯一の原理・原則が存在する」という考え方には好ましくない面もあります。例えば、ドイツ人がいったん意思決定を下すと、それ以降は相当の裏付けがない限り、他者の説得によって他のアプローチに変えることはほぼ不可能です。これは、日本人が得意とするような継続的改善という観点からは有益といえないでしょう。