PR

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所は、多目的最適化計算による設計探査のためのツールを開発している。多目的進化計算のアルゴリズム「Cheetah」、多次元データを可視化することで最適解の分析を支援するツール「iSPM(interactive Scatter Plot Matrix)」などがある。前者は複雑な多目的設計最適化問題を扱うためのツールで、後者は無数にある最適解から設計者が実際に使う解を選ぶ際の支援ツール。「HPCI戦略プログラム 分野4 次世代ものづくり」の研究課題「多目的設計探査による設計手法の革新に関する研究開発」で、企業との共同研究で有効性を実証した。

目的が多い複雑な問題でも良い最適解を得る

 多目的設計最適化では、設計変数(設計者が制御できる変数)を進化(変化)させて解の候補をつくり、これが制約条件を満たすかどうかと、目的関数(質量やエネルギー消費など、最適化したい項目)の値をシミュレーションなどによって評価する。その結果を見て、目的関数の評価値がもっと良くなる(と考えられる)方向に設計変数を変化させて、新たな解の候補にする。

 進化によって目指すのが最適解だが、多目的最適化では二律背反の関係にある目的関数を扱うことから、最適解は1つには決まらず、本来は無数に存在する(パレート最適解)。目的関数Aをやや妥協すれば目的関数Bの値が良くなるが、AとB両方を良くすることはできない、という解の集合になる。

 実用上は、目的関数の数が多い、複雑な問題を扱えることが望ましい。さらに、数学的な解になるべく近く、最適解が存在する領域をなるべく広く一様にカバーできる解(良いパレート最適解)を得ることが重要になる。Cheetahは解の方向に見当をつけるアルゴリズムと、解の間の優劣関係を並列処理で高速に計算するアルゴリズムを組み込んだ。目的関数の数が4つ以上と多くても、良いパレート最適解を得るための工夫である。

 複数の多目的設計最適化問題で検証したところ、「最新の進化計算手法の1つ『MOEA/D』に比べて、より良いパレート最適解が得られることを示せた」(JAXA宇宙科学研究所准教授の大山聖氏)。さらに、パレート最適解の全体を広くカバーできるような解の分布になっている点でも、おおむねMOEA/Dよりも優れているという結果になった。