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 ドイツが推進するインダストリー4.0といえば、将来の製造業に関するコンセプトや国際標準化など、生産現場からは少し離れた“大所高所”の話題という印象があった。しかし、Hannover Messe 2016では生産現場への導入を想定した展示も多くみられた。ここでは、「人とロボットの協働」「スマートアシスト(ITによる人の支援)」「予知保全」という3つのテーマに焦点を合わせて注目の技術を紹介する。

人とロボットの協働

 「つながる工場」に関するさまざまな技術の中で、特に現場への導入が近いと感じさせるのが、人とロボットの協働である。多くの企業が「つながる工場」を志向する理由の1つとして、マス・カスタマイゼーションに代表される柔軟性の高い生産体制の実現が挙げられる。その際、どんな状況でも臨機応変に対応できる人と、生産性や反復作業に優れるロボットの協業は不可欠になるだろう。そのような将来が来ることを見越して、ドイツは人とロボットの協業というテーマに対して力を注いでいる。

 例えば、ドイツVolkswagen社は自社工場に向けた人とロボットの協働生産システムを展示した(図1)。Hannover Messe 2016の会期中(2016年4月25~29日)に「2週間後に導入する予定」(Volkswagen社)と宣言しており、現在は導入が始まったとみられる。まずは、ドイツ・ヴォルフスブルクの本社工場において、「Golf」や「Golf Sportsvan」といった主力車種の生産ラインで使うという。

図1 Volkswagen社の協働生産システム
図1 Volkswagen社の協働生産システム
AGVとロボットを組み合わせたもの。従来は人が全て担っていた作業の一部をロボットに担当させることで、品質や生産性の向上を図る。
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 この協働生産システムは、生産ラインにおいてエンジンのような大きくて重いワークを運ぶための無人搬送機(AGV:Automatic Guided Vehicle)と、ワークに対してさまざまな作業をする垂直多関節ロボットから成る。AGVはVolkswagen社が独自に開発したもの、ロボットはドイツKUKA Roboter社の製品である。ロボットは、作業の精度を確保するために床に固定されたテーブルの上に取り付けている。

 「人とロボットがそれぞれの得意な作業を担当することで、品質や生産性を高められる」(Volkswagen社)というのが、この協働生産システムの利点だ。Hannover Messe 2016の展示では、エンジンに部品をボルト締結する作業を実演していた。従来は、「部品とボルトを所定の位置にセットする」「必要な工具を取ってくる」「エンジン本体に部品をボルト締結する」「次の部品とボルトをセットする」「工具を交換する」といった一連の作業を人が担当していた。これらを全てロボットで自動化しようとすると、ムダが多くなる。そこで、部品・ボルトのセットや工具交換といった柔軟性が求められる作業は引き続き人が担当し、単純作業であるボルト締結だけをロボットによって自動化することで、品質や生産性に優れて投資効率も高い生産ラインを実現できるという。

 Volkswagen社は2015年も人とロボットの協働生産システムを展示していたが、それはあくまでコンセプトだった1)。今回、実際の生産ラインに導入する協働生産システムを展示したことは、同社がこのようなシステムを積極的に展開していく決意表明ともいえる。