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車載カメラでMEMS品の選択肢

 MEMS発振器の小型という特徴は、小型化が求められる車載カメラで生きる場合もある。車載カメラに搭載する画像処理ICのクロック源には一般に数十MHzの水晶発振器を使う。これに対して周波数が同等で実装面積が2.5mm×2mm以下といった小型パッケージ品では、MEMS発振器の方が安いことが多い。

 米Microchip Technology社は、車載カメラを1cm角以下に小型化するには実装面積が小さなMEMS発振器が有利とみて販売に力を入れている。ADAS(先進運転支援システム)向けに多数のカメラを搭載するには、カメラのさらなる小型化が欠かせないと同社はみる。

 水晶発振器は周波数が数十MHzを超えると、振動子の基本波ではなく高調波を使うことがある。この場合、振動子と組み合わせる回路が複雑になり、消費電力も高くなる。さらに小型パッケージに収めるには、真空封止などのコストがかさむ。水晶発振器の小型品が高くなりがちなのはこのためである。

 EMIの低さでもMEMS発振器は有利だとMicrochip社は主張する。車載機器では他の電子機器への誤作動の恐れを防ぐためにEMIの低さが重要になる。

低EMIや耐衝撃性ではシリコン発振器

図4 スペクトラム拡散でEMIを低減
図4 スペクトラム拡散でEMIを低減
シリコン発振器で周波数スペクトラム拡散することで、医療機器などで特に問題となるEMI(電磁雑音放射)を小さくできる。EMIはシリコン発振器で抑えられ、スペクトラム拡散を使ってさらに減らせる。(図:米Linear Technology社)
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 低EMIの要求がさらに強いのが病院で使う医療機器である。最近は高解像度の画像表示や、操作性を改善するユーザーインターフェースの導入が増えており、こうした開発事例で低いEMIが特に求められている。心臓ペースメーカーを含むほかの医療機器への影響を抑えるためである。

 米Linear Technology社や米Maxim Integrated社は、EMIを水晶発振器に比べて2桁低くしたシリコン発振器を販売中である。シリコン発振器は、アナログ電子回路の発振源を制御回路と共に集積したICである。周波数精度は1%前後~数%と、水晶発振器やMEMS発振器と比べると桁違いに大きい。それでもマイコンのクロックなど高精度が求められない用途で使える。

 両社はEMIをいっそう抑制する必要がある場合のために、周波数を中心周波数から分散させるスペクトラム拡散の機能を備えた製品を用意している。中心周波数に集中させないことで特定周波数でのピークエネルギーが最大20dB(1桁)さらに抑えられる(図4)。

弾丸の衝撃にも耐える

 MEMS発振器やシリコン発振器には、水晶発振器よりも高い耐衝撃性がある。この特徴を求める応用には、車載機器のほか、産業分野や防衛分野の機器がある。Linear Technology社は、同社のシリコン発振器が「スマートバレット(弾丸)に使われた実績がある」(同社 Vice President and General Manager,Signal Conditioning ProductsのErik Soule氏)という。スマートバレットには、死角にある対象を狙うために、発射された後に進路を曲げる機能がある。進路を変える際に強い加速度がかかるため、内蔵する電子回路向けのクロック源に水晶発振器は使えないという。シリコン発振器は機構部分がないために、他のICと同様に衝撃に耐える。

 Microchip社のMEMS発振器も最初の実用化事例がスマートバレットだったようだ。同社のMEMS発振器の耐衝撃性は、水晶発振器よりも2桁高い5万Gとする。水晶発振器の5倍以上の70Gの振動(10~2kHz)にも耐えるという。