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選手を技術サポートする

 オリンピックにおいて新しい技術が活躍する場面や目的は多岐にわたる(図1)。技術の適用先は、選手が使用する用具と、競技を行う場に設置される設備に大きく分かれる。

図1 オリンピックにおいて技術が活躍する場面と目的
図1 オリンピックにおいて技術が活躍する場面と目的
用具の最終的な目的は、競技中の選手のパフォーマンスを最大化することだが、トレーニングの場面では筋力を高めたり動作を身に付けたりといった目的の用具もある。設備面では、競技の判定や採点の自動化が技術革新で進んでいる他、大会を円滑に運営するために競技場や放送設備に関する新技術も開発されている。
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 用具としては、選手が身に着けるウエア(水着を含む)やシューズ/スパイク、競技ごとに特徴的な道具(ラケットやボールなど)がある。本番で使うのではなく、選手がトレーニング中に使用する専用の用具も存在する。

 種目によって状況は異なるが、用具の開発に関しては規定(ルール)との戦いである。使用する用具によって差が付きすぎて公平性が保てなくなる場合や、選手が実現するパフォーマンスが高くなりすぎて安全性が阻害される場合などに、国際競技団体が規定を変更することが多い。各メーカーは、常に最新の規定に基づいてしのぎを削っているのだ。

 例えば、2008年の北京五輪において、英Speedo社の競泳用水着「LZR Racer(レーザーレーサー)」を着用した選手が世界記録を連発したのは大きなインパクトを与えた。その後、国際水泳連盟(FINA)の規定が変更され、LZR Racerのような素材や形状は禁止となった*1

*1 Webサイト「スポーツイノベイターズオンライン」(以下同)に関連記事「世界記録を量産した水着

 リオ五輪では、現在の規定の範囲内でさまざま工夫を凝らした水着が各メーカーから投入されている。ポイントは、形状抵抗が低くなるように泳者の姿勢を維持し、効率的な動きをサポートする機能を水着に付加することだ*2。練習時に着用することで最適な姿勢を保ちやすくする製品も開発されており、実際にリオ五輪に出場する日本人選手が練習で活用している(Part2用具編の競泳を参照)。

*2 同「『着れば北島になれる』練習用水着、五輪選手をサポート

 一方、設備における技術革新の最大の目的は、競技を円滑に進めることである。例えば時間を競う競泳や陸上競技において、スタートの不正(フライング)を判定し、スタートからゴールまでの時間を正確に測る仕組みは当然のように使われている。

 近年では、球技においてゴールの成否やボールのイン/アウトを判定するためのシステムなども登場している。これらによって、判定の公平性を高められる。選手の筋力や体格が向上し、競技レベルが向上した現在、選手自身の動きや、選手が放つボールの動きなども速くなっている。肉眼で判断できる限界に近づきつつあるのだ。例えば、2020年の東京五輪での採用を目指すのが、体操競技の自動採点システム。選手の動きを3Dレーザーセンサーで把握し、技の難度を判定して自動採点する計画だ(Part2設備編の自動採点システムを参照)。

 設備面では、競技を観戦する競技場そのものや、テレビで放送したり競技場内のスクリーンで映したりするための撮影や放送に関する新技術も開発されている*3、4。客席からは見ることができないアングルの映像や、肉眼では得られないスロー画像や関連情報を追加することで、観戦の満足度を大きく高められる。

*3 同「スマートスタジアムは、いきなりやってくる

*4 同「東京五輪で世界驚かす、『パナ×電通』でハイテク中継

 加えて、運営コストの面から競技場の耐久性を高める技術も登場した。サッカーやラグビーの会場において、見た目や使用感は天然芝とほぼ同じでありながら、耐久性を大幅に高めた「ハイブリッド芝」だ(Part2設備編のハイブリッド芝を参照)。樹脂製の、いわゆる「人工芝」の技術も進化しているが、土と芝生によるピッチとは使用感が異なり、クッション材のゴムによる健康被害を指摘する声もある。天然芝の弱点だった耐久性を克服できれば、オリンピックが終わった後の競技場の稼働率を高めることも可能だ。