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ユーザー体験(UX:user experience)をデザインする手法を技術者にもわかりやすく解説する連載の第2回。今回は、UXを時間軸に沿って考えることが重要であることを説く。製の利用前、利用中、利用後、利用時間全体という4つの段階のそれぞれで、ユーザーは異なる観点から体験を評価する。この特性を理解した上で、体験全体をデザインすることが大切である。(本誌)

 UXという言葉が日本国内で注目を集めるようになったのは米Apple社の「iPad」の登場以降だろう。当時は、ページがめくれるような動きの表示や、拡大/縮小に使うピンチ操作などが「心地いいユーザー体験」などと表現されていた。この結果、ユーザー体験は「目新しいユーザーインターフェース(UI)」のことと捉えられていた時期があり、いまだにUXはUIのことだと思っている人も多い。これは間違いとは言い切れないが、正確にはそれだけではない。

 ではUXは、どう定義されるのか。実は、つい最近までUXは学問的に定義されていなかった。UXという言葉ができる前は、ユーザー体験系の研究者は楽しさをつくるための技術「ファンノロジー(funology)」などと呼んでいたこともあった。当時は、ワクワクやドキドキなど「楽しい」と感じるポジティブな体験の側面だけが注目されていたためである。しかし、UXという言葉は必ずしもポジティブな体験だけを指すわけではない。むしろUXは製品などを使った時の「ユーザーの反応」全般を意味している。

 現在では、UXは「ISO9241-210」という人間中心設計の国際標準規格で定義されている。具体的には下記の通りだ。

製品やシステム・サービスの利用や、予想された使い方によってもたらされる人々の知覚と反応

 この定義には、注釈が加えられており、そこに書かれていることの方がUXの特徴をよく説明できる。そのポイントを以下に整理した。

 (1)UXは、製品やシステム、サービスの使用前から使用中、そして使用後という、利用体験の時間の流れの中で、ユーザーが感じるさまざまな反応や認識する価値である

 (2)UXは、製品・システムやサービスの特性(ブランドイメージ、外観、機能、性能など)だけではなく、ユーザーの内的状態(態度、スキル、パーソナリティ)および利用の文脈によって影響される

 (1)は、製品やサービスに触れた一瞬だけでなく、ライフサイクルのような時間軸を念頭に置くことを指摘している。この時間軸を扱う点こそが、UXやUXデザインの特徴であり、きちんと理解しておくことが必要だ。(2)は、ユーザーの主観的な利用の反応は、一様ではないことを指摘している。特に、利用文脈には大きな影響を受ける。ゆえに、ユーザーのリサーチが重要になってくる。