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 そこで母が見ていた映画の番組でリモコンのDボタンを押してみたら、確かに粗筋が表示される。後から調べると、実は他の番組ではトップ画面が出て、さらなる操作が必要だったが、母はそこまで分かっていなかった。たまたま映画の時にはDボタンを押すだけで粗筋が読めたので、自分が使いこなしている気分になったわけである。

 次に帰省したときに、今度は「テレビでメールが読めるのよ」と言う。実は、このテレビはインターネットにつながっていなかった。調べてみると、テレビをつけると封筒の形をしたメールのマークが出て、決定ボタンを押すと「ファームウエアの更新はありません」といったメッセージが出るようになっている。これを母は「メールが読めた!」と解釈したのである。

 母はこうした機械の操作が非常に苦手で、以前はリモコンのテンキーしか使えないほどだった。いつの間にかこうした操作ができるようになっていたのは、やってみようという意欲が起きたからだろう。最初の動機は、息子が携わっているデータ放送に対する関心だったかもしれない。それでうまく行ったので、さらに他の操作も試してみたわけである。客観的に見たら、必ずしも母は操作ができたとは言えないが、一連の体験を経て、母の製品への評価は高まったと言えそうだ。

興味と自信でユーザーを分類

 私の研究成果から、製品を使ってみようという意欲は2種類の要因から構成されることがわかった(図1)。一つはその製品ジャンルに対して興味や知識があるかどうかで、興味や知識があるほど意欲が高くなる。利用対象製品に対する関与の度合い(製品関与)と呼んでいる。もう一つは操作することに対する積極性や自信で、自己効力感と呼ぶ。自動車を例にすると、製品関与とは自動車や運転に対する関心の高さで、一方の自己効力感は自動車の運転が得意と思っているかどうかである。

図1 実利用の評価を左右する心理的要因
図1 実利用の評価を左右する心理的要因
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 私は、この2つの軸を使って、四つの事象でユーザーを捉える「SEPIA法」を開発した。SEPIAとは、自己効力感(self-efficacy)と製品関与(product involvement)の解析(analysis)をつなげた言葉である(図2)。

図2 ユーザーの心理を理解するSEPIA法の視点
図2 ユーザーの心理を理解するSEPIA法の視点
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